水槽を持っている人はみんなお正月に大掃除をします。それが証拠に、町の熱帯魚屋さんは殆どお正月にお店を閉めません。当診療所の水槽も例外ではありません。ということでお正月の時間の殆どをこの水槽の大掃除に取られてしまいました。底床を作って2年経過しました。今年は一念発起、水槽を空っぽにして底床を作り替えることにしました。
まずは年末に下準備、少し底床の砂を換えるため、新しい砂(大磯)を買ってきました。実は年末だいぶ水換えをサボってしまったので、水草にかなり苔がついています。残念ながら古い水草は使えそうにないので、全て新しいものに換えることにしました。よく雑誌には安易に水草を捨てるなと書いてあるのですが.........。今回はお叱りを受けることを覚悟の上で、全て抜いてしまうことにしました。
診療最終日の夜、草を抜き、水を抜き、魚を捕まえて砂を全部出しました。中はヘドロの状態、かなり汚れています。砂を全部一度外に出して丸洗い、その後また雛段を作りなおして新しい砂も追加、肥料を敷きました。そして、新たに購入した水草を使って、新しい水景を作り直しました。当院では5年前から水草、それもダッチアクアリウムに拘っています。ここでダッチアクアリウムとは何かを、少し蘊蓄的に話してみたいと思います。
Tasteページの「研修医時代に始まった魚好き」の中でちょっとお話ししましたが、かつて海水魚の水槽をやっていた時代に浮気心を持ち始めたのは、ある本との出逢いがきっかけでした。これは楽しい本なので宣伝しても良いと思い、云っちゃいます。緑書房フィッシュマガジン編集部(03-3590-4441)発行の吉野敏氏著、「水草の楽しみ方」(All About Dutch Aquarium)という本です。この本は当時としては先進的で、これほど多くの水草の解説、レイアウト集を網羅した本はありませんでした。今を遡ること10年近く前に初版となっていますが、現在でも読みごたえ充分です。この本の中に書いてあることを私なりに要約すると、ダッチアクアリウムとは.........
1)色や形状の違う水草を隣り合わせに密植したレイアウト
2)魚よりも水草が主体であること
3)底床を雛段のように持ち上げて立体感を演出する
4)ライデン通り(オランダの花壇の道の意)があること
5)遠目にみると雑然としてなく、抽象的な絵のように見える
これらの条件を満たした水草水槽のことを云うようです。この本の中の文章を引用させていただくと、水草育成の技術より、各種水草の区画を如何に対照的に、しかも整然と配置するデザインに主眼が置かれていると記されています。これは、白いキャンバスの中に素晴らしい絵を描くのと全く同じだと思います。面白いですよ~、だけど難しいです。芸術的なセンスとともに、水草を育成する科学的な知識が要求されるんです。ただちょっとずるいな~と思うのは、この本の中でレイアウトされる水草は殆どが水中葉、つまり水槽の中でしばらく育成させた水草達が使われているんです。我々素人が手に入れられる水草の殆どは水上葉、つまり、植え込んでから時間が経過しないとこのような素晴らしい景色にはならないんです。過去5年間、何度もTryしては挫折して、やり直してきました。なかなか思うような水景が出来ません。そして今年もお正月休みを使って、新たに作り直してみました。これが下にある写真の水景です。何とも5番目の遠目にみると雑然としてなく、抽象的な絵のように見える、というのが至難の業です。やはり抽象的な絵のようにはなかなか見えません。如何でしょうか?
写真をクリックすると大きくなります。水草に詳しい方がいらっしゃいましたら御意見を下さい。正に丹精込めた盆栽を自慢するのと同じ世界です。
この世の中には、色々な趣味とされる題材があると思いますが、本当に面白いHobbyといえると思います。しかも、奥が深いです。時間が経つのを忘れてしまいます。でもこの作業が終わってから私は暫くLumbago(腰痛)に悩まされました。待合室の患者さんが水槽の前に座り込んで、じっと見入っている姿を見て(診察室の中からは待合室の様子がモニターで見ることが出来ます)、密かに院長はニンマリしているんです。また水草が成長して、もっとボリューム感のある水景になったら、このホームページに写真を載せて自慢したいと思います。乞うご期待..........。