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母の納車

 ちょっと.......、もしかすると私の母の自慢話になってしまうかも知れませんが、聞いてやってください。

 私の母は今年70歳、私の父亡きあと、私や女房、3人の子供(つまり母から見れば孫)と同居し、ゴルフ、旅行、観劇、音楽会、そしてグルメと遅かりし青春を楽しんでいるようです。女房ともそこそこ巧くやってくれており、また子供の世話になるのはイヤだとばかりに独立した家計で貯えを崩しながらも自分一人でやっています。母も未だドライバー、若い頃から運転免許を持ち、今や普通2種と大型自動二輪(乗れるものなら乗ってみぃ!)の免許を持っています。そんな母が乗り続けた愛車(BMW525)が約5万キロの走行距離と7年の歳月を迎え、いよいよ老朽化してきました。もう買い換えるつもりはなかったけれど、やはり如何にも今の車では辛い、遂に母は車を買い換える決心をしました。歳もとったことだし、もう少し小さく小回りの利く車、どうやら今までのBMWにそこそこ満足していた母はBMWの3シリーズにターゲットを絞ったようです。しかし、どうしても予算的に苦しいところ、あまり貯金を喰い潰すと自分の今後の生活を圧迫してくることを懸念していたようです(この期に及んでも息子の世話になろうとは考えない)。
 実は私が幼少の頃、母が恐らく未だ20歳代の頃、母はフェアレディに憧れがあったようです。Zではありません。当時ではオープンカーだったSRです。いつも母の車につき合っていた未だ幼稚園児くらいの私はフェアレディに憧れる母に「大きくなったらママにフェアレディを買ってあげるよ。」と云っていたらしいです(そう云えば何となくそんなことを云っていたような気がしないでもない)。そこで! 私が提案しました。「おふくろさぁ、BMWの3シリーズを買うくらいなら、今のフェアレディZの方が安いし格好良いし、運転も楽だし。昔からの夢を叶えてみたら?」と話しました。実は母のゴルフ仲間で母より1歳だけ年下と云う女性がさっそうと一番新しいフェアレディZに乗ってゴルフ場に来るのだそうです。その人がいなかったら母はフェアレディに乗るなんぞ考え及びもしなかったでしょう。どうやら私の昔からの夢と云う文句にグサッと来たようです。そしてしばらくして、Fairlady1.jpg遂に母は私にニッサンのショールームにつき合ってくれと云い出しました。そんな母からのデートの申し出を私が断ろうはずもありません。二つ返事で愛牛を駆り(実は母が私の車に乗ったのはこの日が初めて、この歳では助手席にすら座れないと頑なに拒み続けてきました)、ニッサンのショールームへ馳せ参じました。ショールームに着き愛牛をお客様駐車場に入れると、目を丸くした若いセールスが直ちに寄ってきます。10歳は若く見える母親と5歳は老けて見える息子のカップルを、この担当者はどのような思いで迎え入れたのでしょうか? それもド派手な車で......。
 テーブルにつき、サービスで出てきたコーヒーを飲みながら話をします。主任? ずいぶん若い人だけれど、きっと仕事が出来るので出世しているのかな? と思い聞いてみると未だ入社それほど間もない人。こちらはほぼ買うつもりになっているので、かなり具体的に話が進みます。まず大事なのはBMWの下取り、これはネットワークがあり、たとえ外車でも充分にこちらが満足するするような回答が出来るとのこと。そして新規購入の車のグレードや装備について話していきます。そして取りあえずの諸費用、付属品を含めたこちらの支払いの見積り、そして試乗の約束を取り付けました。
 後日先方から連絡があり、試乗に出向きました。何せ二人乗り、ディーラーの担当者と母が乗っていろいろ説明を受けるものと思い込んでいた私に、「どうぞお二人で廻ってきて下さい。」とのこと。そして母の運転で周辺を走ってみました。乗り降りがちょっと苦しいのとブレーキが効き過ぎて少し慣れるのに時間がかかりそう、と云う以外はいたくご満悦の様子、結局購入を決心したようです。店に戻ってからその主任の上の係長と云う人と話しました。そこではBMWの下取りについて相談。何やら係長は後ろに引っ込み、恐らくはパソコンのデータベースでも引いてきたのか、「下取り値段は○○万です。」といとも簡単に云います。しかも私にとっては到底納得の出来ない低額査定。これでは到底母の購入に賛同出来ないな? と云うのが私の本音。確か何処どこにもう1軒ニッサンのディーラーがあったな? などと云いながら少し脅しをかけます。そして私はあんな車に乗っているのだから相談に乗ってくれる車友達はいくらでもいるとも脅します。しかも知人のニッサンの社員からもpushしてもらうよう頼んであります。母は横でいや~な顔。BMWの査定を宿題にまたの面談を約束して帰りました。
 そして更に後日、契約を強く匂わせて先方に連絡、一応印鑑などを持ってまたディーラーに出向きます。いざ勝負! 母はトヨタやニッサンは値引きに応じない、まぁそんなに頑張らなくても良いからと云いますが、医療機器も薬も相手の言い値では絶対に買わないのが私の流儀、宿題の査定、下取り値はちょっとこちらの予測をやや上回る結果に。それで良いと云おうとする母を止め、更に私がとどめを刺します。「ところで係長さん、あなたは値引きに関してそれを決める権限があるの?」 もしかしたらこんちくしょう! と思ったかも知れません。いいえ、良いんですよ、お互いに気に食わなければお互いに他の人間を相手にすれば良いわけですから。フェラーリやランボルギーニの新車と違ってこの車を買えるところはいくらでもあるわけですから。返ってきた答えは決める権限はないとのこと、「じゃあ権限のある人を呼んでくれよ。」と云うと遂に真打ち、店長が出てきました。後ろでヒソヒソと耳打ち話をします。そして! 店長に私からとどめの一言、「今日は印鑑を持って来ています。今日を延ばせば来年またじっくり考えますけど........。でも店長さんは年内(今は11月)に契約をまとめたいんでしょ? こちらとしては年式の新しい方が良いんですけれどね。」 結局店長からは「あと○○万引きましょう。そして△△(オプション)をサービスしましょう。」との答え。正直なところ少し驚きました。ここまでこちらに有利な条件が引き出せるとは思っていませんでした。これでめでたく契約成立。一括ですか? と聞かれ、「いいえ、ローンで。」と母。担当者は「おめ~、ランボルギーニに乗っててローンかよ?」ってな顔をしていましたが、でも私は契約が終わった時点で仕事は終了。結局BMWのいい加減な査定をもらった時点から合計○○万(これは口外しないとの店長との約束)の値引きとなりました。母も「やっぱり仕事をしている男の人にはかなわないねぇ。」と感心してくれました。そうですよ、私は4人の家族と10人のスタッフを養っているんですから。
 そんな母の車には3500ccにちなんでナンバーを350で取りました。色はプレミアム・シルバー、遠出に出てもBMWより疲れないと母は申しておりました。私も何回か借りて運転していますが、なかなかこの車は速いですよ、面白いですよ。

 実は私の息子が来年18歳、いよいよステアリングを握る歳になりますが、このフェアレディがあれば私は息子に車を買わないで済む? そんな下心があったのも確かですが、母はそれをしっかり見抜いています。チクッとその旨云われたことがあります。もし屋根無しのロードスターにしてくれるのだったら差額(約90万円)は私が出すと母に交渉したのですが「それだけは譲れない。」と断られました。母上、約束と違い私が買ってさしあげたものではありませんが、この車でいつまでも若さを保ち続けて下さいませ........。
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çat.jpgPS) そんな母が可愛がっていた猫、結局父の生前から飼っていたチンチラが老衰で他界しました。15歳! 人間なら何歳なのか? その猫の臨終に際し、母は悲しみとともにずいぶん取り乱していたようです。臨終間際に母が飲ませようと思ったスポイトの水を気管に詰まらせて苦しそうにむせ返る愛猫、母は悲鳴を上げながら私を怒鳴りつけました。

「あんた医者でしょ! 何とかしてよ!!」  あの~、僕.......、獣医じゃないんですけど.......。その猫が死んで以来、母は動物を飼うだけの体力がないと、我が家では初めてペットがいない日々が続いています。