死に場所探し エルニドへ 編集後記
5年越しに行きたいと思っていたフィリピンの西部パラワン島のエルニド! 何とかたどり着きました。なかなか緊張し、天候不順でどのようにな予定変更になるかわからない中、何処でどう転がっても取り敢えず決めた日に東京へ帰って来れるようなスケジュールを組みました。文中にも何回か書きましたが、フィリピンの8月は台風シーズン、初めてスービックに言った時は一週間ぶっ続けで雨、昨年のボラカイ島では後半に台風の影響を受けました。しかし今までの旅行の中で飛行機の遅延はあったものの、旅行がキャンセルになった事は一度もなし、そんな点では僕はいつもついている、そんな認識を持っていました。だから今回は慎重な計画の上だから大丈夫そう考えていました。そして予定通りのスケジュールを消化しました。
このエルニドに入るためには二つのルートがあります。一つはマニラからパラワン島の比較的大きな街、プエルト・プリンセサまで飛行機で行き、そこから陸路エルニドまで行くもの、マニラ〜プエルト・プリンセサ間はフィリピン航空の大きなジェット機が飛び、日本からでもこの航路のチケットを取るのはそれほど難しい事ではありません。問題はプエルト・プリンセサからエルニドまで。陸路チャーターしたプライベートタクシーで5〜6時間、乗り合いのバンであるタクシーで6〜7時間、通常のバスでは長いと10時間かかると聞いています。高速道路などはなく、特にバスはぬかるみにはまり乗客みんながバスから降りてバスを押してぬかるみから脱出したなんて話しを聞きました。確かに現地の人達にとってはそんな長いバスの乗車もやむを得ないかも知れません。今回知り合ったリゾートのバーテンダーもプエルト・プリンセサに置いて来た家族に逢うために月に1回長い旅をすると言っていました。しかし我々外国人旅行者にとってはやはり非現実的、実際にもしそんな乗り合いのバンなりバスに乗ってもその料金はそれほど高額なものではないでしょう。マニラ〜プエルト・プリンセサ間の飛行機の料金はそこそこ掛かるでしょうし、二つ目の方法であるマニラ〜エルニド間の飛行機とそれほど料金は変わらないと思います。今回はその二つ目の方法、マニラ〜エルニド間の飛行機をとりました。しかし僕が通常に使うトラベルデスクではこの飛行機の予約は出来ませんでした。ネットではもっぱらパックになっているエルニドの大きなリゾートの宿泊とセットになって予約するもの、場合によってはエルニドのリゾートの宿泊客優先ということが書いてありました。たまたま今回初めて頼んだツアーデスクがこの飛行機をエルニドのリゾートと抱き合わせで取ってくれましたが、その料金は完全なぼったくりでした。マニラ〜エルニド間のAir Swiftの航空券は片道4.120ペソ、日本円にして9.000円足らずだという事を知っています。僕は今回その倍以上の料金を取られました(><)
さてエルニドの街、パラワン本島のエルニド・タウンですが、今回そのマニラ〜エルニド間の飛行機が良く天候不順で欠航になると言う話しを聞いている手前、万が一飛行機が飛ばなくてもマニラに留まり、予約して前払いをした宿泊費が返って来なくても後悔のないように安宿での投宿を2泊確保しました。島のエルニド・リゾートの宿泊費はAll Inclusive、宿泊以外に3食のビュッフェとダイビング以外のアクティビティ、つまりオプショナル・ツアーの料金全てを含んでいます。決して安い金額ではありません。しかし飛行機が飛ばないために宿泊がキャンセルになっても前払金は返金しないとしっかり明記されています。それでは適わない、ましてや僕が出向くのは台風シーズンの8月、だから返金されない金額を最小限に留めるためにそんな宿を取りました。エルニド・タウンのど真ん中の安宿を取れば良かったのでしょうけれど、ツアー・デスクが指定したホテルはエルニド・タウンの中心部からトライシクルで25分も走らなければならない不便な処でした(これも気に喰わない! 多分相当額のマージンがあるのでしょう、それも僕の支払いに乗っかっているはずです。)。そしてこの遠く離れたホテルから下町であるエルニド・タウンへ二日続けて出向きました。ところが! そのエルニド・タウンはもの凄く面白い街でした。これは嬉しい誤算でした。決して街は洗練されていない、レンタル・バイクで走ればすぐに見尽くしてしまうほどの小さな街だし、夜のエンタメがある訳でもない、しかし物価は安く、新鮮な海の幸を味わえ、そして一方で外国人相手のそこそこ洒落た店もある、今まで経験した事のない街でした。大いに堪能しました。もし島のリゾートに直行で行ってしまっていたら、この移住の地の候補足り得るこの街を見過ごすところでした。天気はあいにく2泊3日間雨が降りっぱなしでしたが、また晴れている時の街を観たいと言う意味でも、是非とももう一度出向きたい街でした。
そしていよいよエルニドの島のリゾート、エルニドにはたくさんの島のリゾートがあります。エルニドは1島1リゾート、しかし今回の旅行ではスケジュールの関係上一つの島を選択するしかなかったので、僕は迷う事なくミニロック島を選びました。その理由は今回どうしてもこのミニロック島のビッグラグーン、スモールラグーンを観たかったからです。他の島のリゾートに宿泊してもミニロック島へ来られることは知っていました。各島のリゾート間では相互乗り入れがあり、例えば僕がラゲン島やパングラシアン島に宿を取っても、アクティビティでミニロック島へ来て、そこでランチすら宿泊料金の中で食べられることを知っていました。でもやはりビッグラグーン、スモールラグーンへのアクセスの良いミニロック島を選びました。だからこそ、アクティビティでビッグラグーン、スモールラグーンへ出向いた後もまた自分でカヤックを漕いでもう一度ビッグラグーンへ行く事が出来ました。もし他の島のリゾートに宿泊していたら、これだけ腰軽く動く事は出来なかったと思います。
さてそのビッグラグーン、スモールラグーン、そこはやはり素晴らしい処でした。今迄僕は好きな青い海をたくさん観てきました。沖縄、パラオ、トラック、そしてフィリピンのボラカイ島、セブのスミロン島、未だ憧れるモルディブやフレンチ・ポリネシアンには行っていませんが、そんなビーチ・リゾートとは違う、全く異質の青い海を観る事が出来ました。数億年前からの手つかずの大自然がそこにはありました。見上げるような断崖絶壁に囲まれた運河のような細いラグーンは異種独特の荘厳さがありました。ビッグラグーンでもスモールラグーンでも自分の手で漕ぐカヤックで観て廻りましたが、あの景色はカヤックでないとゆっくり眺める事は出来ないでしょう。もしジェット・スキーがあってあそこを自由に行き来したら、それはそれで楽しい観光になるでしょうけれど、スピードの出ない歩くような速度で進むカヤックだからこそ、あの景色の素晴らしさが堪能出来たのではないでしょうか? 天気には恵まれたものの前日までは結構な雨、だからインターネットの写真で息を飲んだ海の色とは若干違いましたが、それは雨のせいなのか、あるいはインターネットの写真に修正が加えられているのか未だに分かりませんが。その正解は人から耳づてで聞くのではなく、もう一度出向いて自分の目で見て正解を得たいと考えています。
ミニロック島のリゾートについて、ここは本当に居心地の良いホテルでした。当初からどの部屋にもバスタブはない、恐らく狭い部屋である事は予想していましたが、部屋そのものも決して寝苦しいものではありませんでした。しっかりと熱いお湯が勢い良く出て、クーラーはしっかり効いて、島の何処にいてものんびりリゾートライフを満喫出来る施設でした。今度はぼったくられないツアーデスクを介して、水上コテージかビーチサイドヴィラに泊まりたいと思っています。目が醒めた時にカーテンを開けて真っ先にあの海が目に飛び込んで来たら、それはやはり至福の時でしょう。自分の部屋の前のベランダで海を観ながらのんびりビールを飲むのも最高だと思います。
そしてこのリゾートの食事、3食ともビュッフェ、やはり西欧人が多い手前、洗練された美味しい食事には驚かされました。やや若い人向けか、塩味の強いものが多かったようですが、だからこそ食べ放題の中で自分に自制心を働かせる事が出来ました。どうやらエルニド・タウンでは新鮮な生野菜が手に入り難い様子、でもこのミニロック・リゾートではウサギの如く葉っぱをたくさん食べる事が出来ました。肉類はビーフ、ポーク、チキンがそれぞれBBQで焼かれ、一方で白身魚、烏賊、海老、蟹などの海の幸のBBQもたっぷりありました。炭水化物はご飯、パン、パスタと全て揃っており、その質も充分に満足出来るものでした。
そしてこのエルニドのミニロック・リゾートのスタッフ達、彼らは一言で言えば働き者です、フィリピン人にしては珍しく……。アクティビティの予約を取る女性スタッフ達は確実にそのセッティングをして、僕らにどのようにすれば良いか、分かりやすく充分に説明してくれます。アクティビティのツアーガイド達、ゲストの安全を充分に確保しながら、各見どころの説明をしてくれます。彼らのそんな配慮は医学的な知識も含んでいることが垣間見えました。ゲストがボートと桟橋の間に足を挟まないように配慮しているのが分かりました。ゲストがシュノーケリングをしている時にも気配りをしているようでした。そして仲良くなったバーテンダーがいました。彼から聞きました。4週間休みなく働いて、数日の休暇を取って家族に逢いにプエルト・プリンセサまで行くのだそうです。でもみんなが誇りを持って、しかも楽しく仕事をしているのが見受けられました。マニラのホテルでもたまにそんなフィリピン人を数名見ましたが、僕の眼にはここでは皆がそんな風に働いているように映りました。
さて、エルニドは移住の地に適しているか? 答えは’Yes!’です。なかなか移住した後に贅沢なリゾートには行けませんが、たまに数千円払って街からアクティビティに参加するのはありでしょう? バーテンダーに冗談で「ここで日本人客相手の医務室勤務は出来ないか?」と尋ねたら可能だと言っていました。イエイエ、無理でしょう……。