第1日目、大学病院勤務時代、私が医者になって3年目、大学病院の救命救急センターに数カ月配属されました(有無も云わされず強制的に)。そこは3次救急専門、つまり生きるか死ぬかの最前線、修羅場です。でも! 大いにいろいろな経験が出来ました。ずいぶん自信と云うか、自惚れと云うか、得たものは多かったと思います。そんな救命救急センターの教授が定年を迎えられ、退官記念パーティをするとの招待状をもらいました。場所は横浜の一流ホテル、そして偶然にも友達に誘われ翌日はベイサイドマリーナで行われるフローティング・ボートショー(つまり海に浮かばせた船の展示会)に行くことにしました。二日連続で横浜? じゃあホテルをとって泊まっちまえ、そう思いついてAmexにホテルをとってもらうことにしました。時は3月の連休、1週間前の予約にも関わらずAmexから帰ってきた返事は、「その日は横浜市内のホテルは一部屋たりとも空いていない」とのこと。何? それ......? 後で分かりました。日本循環器病学会が横浜であり、全国からその学会に参加する医師が集合、横浜市内のホテルは全部占領されたと云う訳です。しかし! それでも辛うじて出たキャンセルをAmexがかっさらってくれました。辛うじて一部屋とってくれました。名前だけは聞いたことがあるホテル、結果的には私はこのホテルを気に入ってしまいました。さてお気軽な横浜1泊、ご覧あれ!
この日は都内も横浜市内もひっどい渋滞。我が家から横浜まで3時間半かかりました。空いていれば1時間以内、日中普通に来ても2時間まではかからないはずなのに。結局ホテル到着が午後6時半、7時からパーティです。初めて来たホテルのベランダから見た夜景、ベイブリッジ、観覧車も見えます。さてパーティに出るためにスーツにネクタイ、懐かしい人に逢えるかな?
かつては家族でよく横浜に来ました。でも子供が大きくなった今では殆どそんなことはなし。かつてクリスマスは必ず一家全員で横浜に泊まりに来ていました。そして中華街、クリスマスに中華街って意外に穴場なんです。いつも決まったホテルのスイートルーム、それも決して高くはない部屋で大いに楽しみました。それだけに一人で泊まるホテルは寂しいものです。
今日は愛牛で来ました。フロントにいたベル・ボーイさんが、「この車では駐車場へは入れないでしょう、どうぞこちらに置いて下さい。」とピロティのスペースを開けてくれました。そう、そうするといつもホテルのスタッフの人が監視してくれるから安心です。やはり目の届かないところに置いておくのは心配になります。特に最近は盗難が多いようです。
会場に着きました。懐かしい先生が10名ほど。「よぉ! 元気かい?」 昔の上司が尋ねてくれます。同級生もいました。同級生の誰々がまた自殺したんだって........。こんな話になってももの凄く驚くと云う気持ちにはなりません。自殺? 何となく気持ち分かるよな.....。俺らだって死にたくなることってあるもんなぁ......。開業しているドクターはみんな辛そうです。
本日の会費は2万円也、結構な出費です。ちゃんと領収書は用意してくれていました。まぁ一流ホテルだからやむを得ないでしょう。さて、まずは腹ごしらえ。ビーフ、ポーク、ラムとありますがどれにしますか? シェフに尋ねられラムをオーダー。もう一度オーブンの中に少し入れて暖め直してから供してくれます。特製のソースをかけて。
本当はビーフと云いたかったのですが、この脂を見てやめにしました。最近はサーロインステーキやカルビの脂がこたえます。もう身体があまり受け付けなくなってきました。その他にカナッペやサラダが。結構人数が多く、料理は少し不足気味。まぁ食べに来たと云うわけではありませんから。会費の半分くらいがお祝いと云ったところでしょうか?
パスタは十分にありました。手長エビのパスタ、結構美味しかったです。パスタを食べながら昔の上司、後輩と談笑。同級生の娘はもう就職だそうです。うちの息子は浪人だよ......。良いじゃないか、現役で医学部になんか入れっこないよ。同情でしょうか、本音でしょうか? でも当時の仲間はみんな大学には残っていません。それぞれ開業や病院のポストに。
飲物はたくさんあります。私はずっとウィスキーで行きました。でも立食なので座れません。そろそろ疲れてきたなぁ.......。「ゴメン、今日はもう先に帰るね。」 たった一人の同級生も少し遠いところから来ているので早めに帰るそうです。でも話を聞くと彼のところも患者は多いみたい。患者が多くてもちっとも楽にならないのは何故なんだろう? 二人で疑問です。
いいよね、もう退官なんだから顔を出しちゃって。この人が教授です。偶然にも大学はもちろん、高校まで私と一緒。当時はよく抗生剤の使い方で怒られました。朝のカンファレンスで Prof「何故この程度の外傷で第三世代の抗生剤を使うんだ?」 DrTak「△△先生(当時の私の上司)が手袋を使わないで素手でカテーテルを入れたからです。」 なんて結構逆らってしました。
市からの感謝状です。非常に僭越ではありますが一言云わせて下さい。あの修羅場のような救命救急センターも安月給でこまねずみのように働く兵隊がいるからこそ成り立つんです。48時間詰めて24時間offを繰り返す勤務シフト、そしてそのoffの24時間内に女房子供を食わせるためのアルバイトをするんです。長男も救命救急センターの当直中に生まれました。中田宏市長!
頃合を見計らって私もこっそり会場を抜け出しました。フェードアウト。さて、道連れも出来ずに一人で横浜の街へ。本当は六本木で飲もうよといつもの友達に誘われていたのですが、こんな訳で断ってしまいました。ちょっと様子をうかがうために電話してみると、結構楽しくやっているみたい。隣に座っている女の子が裸になっている? 何? それ?
何となくお腹が満足しなくて餌場を探すことにしました。するとやっぱり来慣れたところに。いつしか自然に足は中華街へ向いていました。未だ時刻は9時半、まだまだやっているお店はあるはずです。でも一人ってのがやりにくい。一人でも入れそうなお店を探すことにします。そうだなぁ......、やっぱり麺類かな? 何となくタンメンが食べたくなりました。
一人で入れる店を探すために今まではあまり来なかった中華街の路地裏もうろつきました。そもそも家族で来るときはもうちょっと早い時刻だったから、こんな夜遅い中華街はあまり縁がありませんでした。でもよくよく見てみるとこんな小路でもちょっと美味しそうな店があります。でも小さい店ほど早く終わってしまうみたい。今度また昼間にチェックしましょう。
創作四川料理? 美味しそうですね。残念ながらこの店はもう終わっていますが、私は中華料理の中ではやはり四川が好きです。やはりピリ辛。未だ私が勤務医時代、良く女房と二人で来た頃の横浜中華街で四川料理と云えば重慶飯店しかなかったはずです。恐らくはこんなグルメブームが来て四川料理の店もきっと増えていることでしょう。
なかなかタンメンの美味しそうな店がありません。五目そばは何処にでもあるんだけれど。こんな見本があると選ぶ良い指標になります。そう、炒飯も食べたくなっちゃったなぁ........。歩いているうちにそろそろ本格的に空腹を感じてきました。そう、だってラムのグリルとパスタ2皿、それにサラダくらいしか食べていないもん。もうちょっとがっついてくれば良かった。
ようやく一人でも入れそうな店を見つけて落ちつきました。結構歩いて喉が乾きました。タイガービール! 一気に飲み干しました。プハ~! 一人でこんな店に来る寂しさと、その一方で自由になったような解放感を感じます。そう、たまには横浜に泊まりに来よう、一人でも。今日のホテルもそれほど高くないけれど居心地は良さそうだし。
頼んだのはエビつゆそば。見本とだいぶ違うぜ。見本にはエビがた~っぷり入っていたのに、実物では上からエビが見えません。中に4匹ほど。でもスープはなかなか美味しく仕上がっていましたよ。結局これを平らげてまたフラフラと横浜市内をさまようことに。そう、しまったなぁ、本で見た是非行きたいバーがあったんだけど、何処だか忘れちゃった。
落ちつけるbarを探しながら結局元町に来ました。夜の元町なんて初めて。でもこんな時刻にやっているお店なんてあるわけないよね。ちょっと雰囲気の良さそうなBarがあったのですが、やはり初めてと云うのは入りにくい。結局やめて元町のウィンドウを見ながら歩くことにしました。ここ最近全然来ていなかったからね。でもMooneyesの店がなくなったのは寂しい。
おっと! キタムラのバッグの店がありました。女房のお気に入りのブランドです。これ、結構格好いいじゃん。値段? あれ~、かなり安いね。良いよ、これ。でも実は今年結婚20周年、記念日までもう数週間、今女房に渡すプレゼントを探しているところなのです。良いバッグがあったのですが、売れてしまって逃しちゃいました。今デパートの外商の人に探してもらっています。
そう、以前来たことのあるBarが近くにあるからそこに行こう。そう思って元町を後にしました。川を渡ります。すると、ライトをつけた小型のクルーザーがすごいスピードでこの川を走っていきました。うわ~、かっこいい!! 今頃何処に行くの? 東京湾に出たら危なそう。途中でアンカリングして朝まで船の中で過ごすのかなぁ? それも良いだろうなぁ.........。
そう、地下鉄が出来たんですよね。みなとみらいが出来て、更に交通網が発展しました。ただしそのために桜木町が少し寂れた? 実はタクシーの運ちゃんの薦めでそちら界隈に飲むところを探したのですが、ずいぶん寂れていました。ここじゃ飲めない、そう考えて中華街に向かったのですが。だいぶ歩き疲れました。目的のbarはもう少し。
ハイ、到着です。前女房と来たことのあるジャズバー、しかもちょうどタイミング良くこれから正にライブが始まるところ。店内は結構混んでいて、演奏するところのかぶり付きのカウンターしか空いていませんでした。もちろんそこでOKですが、ちょっとうるさくなりそう。一人で来ている人も少しいるようです。この店も数年ぶり。
ね、演奏するカウンターの真ん前、ベースが置いてあります。ジャズ、このジャンルも奥が深い。そう、普段からあまり好んで聞くジャンルではありませんが、美味しい酒を飲みながら聞くのは好きです。予定より少し遅れて演奏開始。ティナーサックスとベースとドラムの3人組で演奏をします。でも廻りを見るとお客さんはあまり演奏を聴いていないみたい。
今日の酒はLAPHROAIGをオンザロックで。これはシングルモルト、ボウモアと並ぶシングルモルトの双璧の一つですが、何とも薬臭い、癖がある。最初飲んだときは到底好きにはなれないまずい酒だと思ったのに、それがいつしか病みつきに。不思議な経験でした。今ではジャズを肴にドンドン行っちゃいます。良い気分になってきました。
おつまみはこれ、牡蛎のからしバター焼き、スティック状に切ったベーコンがついてなかなかの味です。そう牡蛎も後残すところ僅かしか食べられません。今年はあまり牡蛎を食べませんでしたね。結局数曲の演奏を聴いてこの店を出ました。そしてもう1軒、今度は客引きの兄ちゃんに引かれてクラブへ。そこで1時間ほど楽しい時間を過ごしてホテルに戻りました。午前2時。
最近は悲しいことにちょっと飲み過ぎると寝ている間もおしっこに起きるようになってしまいました。今夜も。午前5時10分過ぎ、カーテンの外が少し明るく見えました。ベランダに出てみると、オオ~! ベイブリッジの上に綺麗な朝焼けが。残念ながらこの素晴らしい朝焼けを一緒に楽しむ相方はいませんが、寒い中しばし見とれてからまた眠りにつきました。このホテル、良いよ!
横浜の夜、来て良かったです。それにしても懐かしい人にずいぶん逢いました。みんな元気でやってはいるようですが、決して楽ではないみたい。さて、明日も楽しみがあります。