Dr.Takの船舶免許取得日記第2日目
朝9時前に新大阪駅前のホテルをチェックアウト、午前9時過ぎの新大阪発ののぞみで岡山へ。そして岡山からこだまに乗換え新尾道駅で下車、駅でブランチをとり、タクシーで1000円足らず、海技学校へ着きました。パンフレットによると朝早く東京を出れば集合時刻の昼過ぎには学院に着くことが可能なのだそうです。現に現地で知り合った東京の人はそのコースで尾道入りしたとのこと。事前に下見に来ていましたから大体のことは把握していました。さてこれから1週間、私はほぼ20年ぶりに学生になります。そうだ!? 学割利かなかったのかな?
学院前にて。そうですか? 私は専門学校生ですか? 何となく嬉しくなりました。学生と云う響きに、昔に戻りたいと云う願望があるのでしょうか? 確かに学生時代は良かった! お金はあまりなかったけれど、それなりの遊び方をして、恋をして、そして少しだけ勉強もしました。
教室です。本日は午後1時から50分授業が6コマあります。初日からなかなか厳しい。しかしこの学校のモットーはたとえ詰め込みでもとにかく短時間に知識を収得、早く卒業、そして免許取得。そんな意気込みがヒシヒシと伝わってきます。受講生は総勢20名、見回すともしや私が最年長.......?
大きな三角定規とコンパスを持ってくるように云われています。後にこれで苦労することに......。講義は基本的なことから始まります。とにかく何より大切なことはマナー、そして安全確認、点検を充分にすること。それに尽きるようです。久しぶりの受講、学術講演会で椅子に座ることは多々ありますが、Dutyとなる受講は本当に医学部の学生以来? 少し緊張......。
結構ハードな講義が終わり、午後7時過ぎに初めて1週間を過ごすホテルの部屋に入りました。東京から送ったトランクも到着済み。しかし部屋は狭い.....。それに、机がないじゃん! ベッドの足下に座ると奥の棚が机代わり? でもそれも狭い。推定9-10平米、ユニットバスはついています。そしてクーラーとテレビも。何せ1泊5千円、寮の方が良かったかな.......?
何とホテル住まいを選んだのは私ともう一人だけ。しかももう一人は違うホテル。結局夜は一人でこのホテルで過ごすことになります。ちょっとそれも寂しい......、夜な夜なこちらで知り合い、仲良くなった人達と酒盛りかと思いきや、早速予定が違ってきたようです。しかし.....、こんなことを云って申し訳ないんだけれど、1泊2食付きで3200円の寮に私はどうしても入れない.....。その値段を聞いた時にもうホテルをとることを決意しました。部屋はとにかく、餌はもう少しお金を取って欲しい、正直な私の気持ちです。
実は案の定、翌日には寮に入った受講生のうち4人が私のホテルへ逃げてきました。でも聞くところによると食事はなかなか美味しくてたらふく食べられるとのことでした。部屋が狭いって? こっちへ来てもあまり変わりませんよ。じゃあ私は寮で良かったかな? まあ人それぞれ、しかも残る人達は若い人ばかり、20歳代が中心でしょうか? 私も20歳代では贅沢はしませんでしたから。
結局初日は友達も出来ず、一人で夕食に出掛けることにしました。私は一人っ子、だから一人で食事することも、孤独に晒されることもあまり苦にはなりません。ただ酒を飲みながら昼間の講義のことをああでもない、こうでもないと話し合うことがまた楽しいのではないかと思っていました。対岸のネオンが水面に写り綺麗でした。女房にメールを打ちます。女房から「頑張って!」のエールが。
ホテルの隣は名物の尾道ラーメンの店。結構行列が出来るようです。一度出向く必要がありそうですが、今日は出来れば海の幸を堪能したい、そんなことで街を歩きました。ただ、尾道は夜が早い! 夜7時8時でどんどん店が閉まって行きます。ラーメン屋さんですら8時閉店。勉強疲れの夜食にラーメンと云うわけには行かないようです。
食事を終えてホテルに戻りました。でも....、食事でビールすら辞めたのにやっぱり飲まなきゃ。結局また出掛けました。歩いて10分くらいの処に飲み屋街が。私好みの店が4-50軒はきらびやかなネオンを輝かせています。まずは焼き鳥屋さんに入って情報収集、なかなか美味しい店でした。
店の主人に楽しく飲める店を推薦してもらいました。まさかぼったくりの店はないでしょうね? の質問にも安心できる答えが。結局もう1軒行きました。カウンターの隣でカラオケをやっているおじさんと話をしました。「船の免許を取りに東京から来た? 俺は学院の元教官だよ。」 ???
こんな調子でこれから1週間? ちょっと一抹の不安もありました。まずは友人が出来ないと。明日はいろいろな人に声をかけてみよう、そんな気になりました。未だ同級生の年齢も、職業も分かりません。男ばっかり、若い可愛い女の子が紅一点。講義の教材、問題集が揃いましたが、重ねると結構な量、先を見てみると、海の上での法律、海図の読み方、航海計画の立て方、気象、そして機関、つまりエンジンの知識など、憶えることは盛りだくさん。聞くところによると1週間講習を受けて免許を取れない人はいないとのこと。だけど本当に1週間でこれだけの知識を頭に詰め込んで試験にパスするの? 医学部の講義の方がよほど時間的余裕があるよ....。本当に正直な私の感想です。エンジンの知識、これは任せて下さい。オルターネーター、キャブレター、クランクシャフト、吸入-圧縮-爆発-排気、全部知っている言葉です。オルターネーター? フェラーリのオルターネーターがいくらするかまで知っていますよ。それとロープの結び方、船の免許を持っている友人から「僕はもう忘れちゃったからしっかり習ってきてよ。」と云われています。しかし、これが後で飛んでもないことになるのです........。
今日の講義で初めて知りました。もし真っ正面に船が向かい合ったら? これをお互いに行き合い船と云ってお互いが他船の左舷を通る、それも相手が避けることを十分に理解出来るようにオーバーアクションで船の向きを変える。もし斜めに船が並び衝突の可能性が出てきたら、相手の船を右舷に見る船を避行船(ひこうせん)と自ら呼び相手を避けなければならない、逆に相手の船を左舷に見る船を保持船(ほじせん)と自ら呼び、保持船は速度も針路も換えてはいけない、そう海上衝突予防法で厳格に定められているのです。東京湾で起きた自衛隊の潜水艦なだしおと釣り船の衝突事故、殆ど100%潜水艦が悪いのに、衝突する直前に釣り船の船長が保持船でありながら最後に衝突を避けようとして絶対にしてはいけない左への舵切りをしてしまったために10%の責任を問われたんだそうです。でも......、その船長さんは最悪の事態を避けるべく、そしてやむなくそうしたはず。それでも責任を問われるのは血の通わない法律に縛られている人間の悲しさだと思います。ニュースで私も見ました。泣いていたあの釣り船の船長さんが不憫でなりません.......。