もともと僕は靴を見たり選んだりするのが好きです。革靴はもちろん、スニーカーもいろいろと好みのものを選んできました。このホームページのTopPageにも書きましたように、いつかはBerlutiのベネチアンレザー、特にアレッサンドロ(創始者の名前がついた定番靴、Ferrariで云えばエンツォのようなもの)が欲しいと思っていました。でも高価でなかなか手が出ませんでした。銀座に出掛ければ必ずBerlutiのブティックには入ります。そしてかっこいい靴を眺めては値段を見てため息をついて出てくる、そんなことの繰り返しでした。今回の旅行では腕時計のROGER DUBUISのブティックを訪ね、時計を見るつもりではいましたが、まさかBerlutiの店があることは調べていませんでした。しかしこの店があれば当然のように入って行きました。そして並んでいるアレッサンドロの中でひときわ目立つ靴がありました。右足用のサンプルにはTatooが入っていて、左足のサンプルにはTatooがなく、すっきりとしたいでたちでした。勘違いした僕はスタッフに愚かな質問をしてしまいました。Tatoo入りのものとTatoo無しのものとどれくらい値段が違うのですか? 瞬時に頭の中ではTatooが入っていなければ少し安いかも知れないと思ったのです。しかしスタッフの説明で、ここにディスプレイされているサンプルはもともとペア、右足だけTatooが入っているのです。これはBerluti120周年記念モデル、限定品のようでした。一応値段を尋ねました。○○万…、やっぱり無理……、サラッと説明を聞いて店を出てきました。そして5分程歩いてコーヒーショップに入り、クリニックのLINEに「すごいかっこいい靴があったよ。」と書き込んだのです。120周年記念限定モデル、スタッフの一人が写真を見たいと云うのですが、もちろん買いもしない靴の写メを撮ってLINEに載せることなんて出来ません。「ものすごくかっこいい。」と云う僕の言葉にスタッフも是非見たかったようですが、検索しても見つからなかったようです。その後コーヒーを飲んでいるともう一人のスタッフから「先生の云っていた靴、ヤフオクで飛んでもないことになっています!」の一報が入りました。何と彼女が送ってきたLINEメールには先ほどの見たばかりのあの靴の写真が添付されていました。オークションはさっきの値段に19万円上乗せした金額からスタート!? エッ?! じゃあ買わなければならない? かなり焦りました。コーヒーを飲んでも口の中はカラカラ、しかし! 実は昨年クリニックの防水工事とスタッフ用のトイレを改築して僕は個人の借入がドッと増えたのです。法人から家賃を取っている僕はその工事を法人の経費に出来ません。個人で借り入れてその工事をしたため、僕の所得分の経費にしました。そして数日前、顧問税理士さんから確定申告の申請が終わり、△△万の還付金がある旨連絡を受けたのです。靴の倍額! だから少し気が大きくなっていたのも事実です。再度! 僕はまたBerlutiのブティックに戻ることにしました。しかし何となく決心はつかない…、「残念ながらサイズがありません。」と云う言葉を期待しながら……、それなら諦めがつきますから。先ほどため息をつきながら出て行った一見の客がまた舞い戻ってきた? 売れると思ったのでしょうか? 先ほどの店員は僕の顔を見るなりニヤリと笑みを浮かべていました。サイズある? と尋ねる僕に自信満々に「あります!」と彼は答えました。取り敢えず試着を。試着のために脱いだ僕の靴をチェックしているのか、僕が足のサイズを自ら告げるまでもなく、サラリと奥からピカピカのアレッサンドロ120周年限定モデルが出てきました。足を入れると吸い付くような履き心地、一期一会、この言葉が当てはまるのでしょうか? 結局東京へ戻ってもあるとは限らない、また大阪へ舞い戻る? 戻ってきたときには売り切れ? そんなことを考えました。店員曰く、恐らく日本には20足くらいしか入って来ない? 結局僕は陥落しました。フィレンツェでもそうでしたが、僕は靴を奮発するときは揃いのベルトも手に入れます。こうして10年越しで欲しいと思っていた靴は衝動買いと云う形で手に入れることになったのです。