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医療経営の実態

 あまり皆さんになじみがないと思いますが、クリニック等の医療経営にもいろいろノウハウがあり、そのマネージメントのための雑誌なんかがあるんです。私も2冊ほど購読していますが、本日そんな雑誌が配達されてきたので、ちょっと書いてみようかなあと思いました。なかなか現代の医療経営って厳しいんですよ。医師優遇税制も取っ払われ、支払基金の査定は厳しくなるわ、我々の購入する必需品は値上がりするわ(実は4月にレントゲンのフィルム代の保険点数が僅かながら下がったんですが、何故か業者からフィルム納入価の見積もりは25%もUp、頭に来た私は現像機のメンテナンスもその業者に依頼していたため、現像機を別の業者から買い直して値上げを通告してきた業者を叩き切ってやりました)、もう散々な目に遭っています。その上ちょっとミスでも犯そうものなら吊し上げでしょう? こんなに苦労するんだったら医者にならなきゃ良かったなんて、最近ちょっと考えちゃうことがあります。

 かつて新聞(平成12年6月)で、開業医の平均月収は237万円と云う報道がなされました。皆さんはこれを見れば「オオ~!それでは開業医の平均年収は2800万以上?! やっぱり稼いでやがるなあ!」と思われるでしょう。これが厚生省とマスコミの連携プレイによる保険医療潰しの伏線なんです。まずからくりは? これって、月収じゃあないんですよ! 実はこれは収支差額なんです。つまり医業収入(保険診療や自由診療、委託料などを全て合計した総収入)から経費(人件費や薬・材料などの購入費、施設維持費や水道光熱費など)を引いたものなんですが、例えば借入金の返済はこれに反映されないんです。でも借入しないと診療所の新築は出来ません。都内では土地を買って診療所を新築しても、生涯で回収は出来ないと云われています。私なんざ返済と借入利息合わせて年間2000万以上払っているんですが、実際にこの金額は収支差額に反映されないんです。あたかもこの金額が私の年収に乗っかっているように報道されちゃっている訳ですよ。現に上に乗っけられて所得税や住民税を取られている訳なんですが。お上の目論見は、「エ~! 医者ってそんなに儲けているの? だったら医療費をもっと削ってもいいよなあ。」と皆さんに思わせ、保険医療を守ろうとする医師と患者との世論を分断するよう計られたものなんです。云ってみれば情報操作によって医師と患者を陥れる、正に”風説の流布”と同じくらい悪質なものなんです。皆さん、騙されないでね。マスコミも個人個人を捕まえれば、「医者がもうそんなに旨い汁を吸っていないのは分かるんだけれど、記事を売り込むには医者いじめの記事を書くと良いんだよ。」と云う奴すらいるんですから。よく筑紫哲也さんのニュース23を見ますが、先日がっかりしました。もともとこの人は冷静で公平な論評をすることで私は好感を持っていたのですが、医療過誤のニュース(被害に遭われた方は本当にお気の毒ですが)で最後に一言「日本の医者は偉すぎる。」と。そんなこと全くありませんよ。偉すぎるのはごく一部の医者、今や特に若い医師は謙虚に医療に携わっている人の方が多いはず。欧米の医者の方が地位も考え方も、そして報酬もずっと日本より偉いものです。あなたも色眼鏡で見てものを云うのですか? 本当に日本の医者が偉すぎるとお思いなのでしょうか? かつて私の若い頃、オートバイに乗る人間が全て暴走族であるように云われたのと同じ考え方ですね。本当にあなたにはがっかりです。

 前にも書いたことがありますが、医院やクリニックは都心部ではもう飽和状態(一方で地方では全然足りていないところもまだまだあるんですが)、我々が生き残りをかけて競争を強いられているんです。のんびりやっていた先生が、近くにライバルとなる医療機関が出来たため、休みを返上なんんてことも聞いています。辛いですねえ。それでもその先生同志が同席すると、「いつもお世話になっております。」なんて挨拶しなければならなかったりして。昔は確かに良かったらしいですねえ。忘年会でも割と高齢の先生は「昔はこんな湿気た話はしなかったよなあ。」なんてぼやいています。そんなに良かったんですか? うちは父親も大借金をしていたので、結構辛そうでしたからねえ。私が小学校時代に家族で外食をしに行ったとき、ステーキを食べることになったんですが、父親が結構苦しいのをそれとなく知っていたから「僕はポークソテーでいいよ。」なんて云ったことがあるんですよ。健気でしょう? 本当にその時は私だけポークソテーを食べました。子供心に父のおごりでステーキを食べていた看護婦を恨んでいたものです。

 まず第一医療関連の”もの”がみんな高すぎます。医薬品が高いのは前から云っていますよね。欧米の1.5~2倍、3倍だって。はっきり云っちゃいましょう! 厚生官僚の製薬会社への天下りを禁止すれば薬価が下がって、保険医療財政はもっと楽になるぜ! 医院待合室用の椅子ってのがカタログに載っていました。普通のビニール張りの何でもない椅子が1脚5万円。全く医院用って何処が違うの? 今や抗菌コートなんて当たり前の時代ですけどねえ。

 実は以前欲しかったレントゲンフィルム用のスキャナーがあったんですよ。アメリカ製で半切と云う、A3よりもうちょっと大きいフィルムをコンピューターに取り込むのに1~2秒と云う優れものなんです。向こうで買うと5~60万円、私はこれが100万でも買ったと思うんですけれど、何故かこれが日本の代理店を通して買うと240万、Mac World Expoに出展していたので私はスタッフに云ってやりましたよ。「商売が下手だなあ、これ100万で売れば、飛ぶように売れるよ。」ってね。結局殆ど日本では売れていないみたい。一時期本気で向こうで買ってこようかとも思ったんだけれど、もし修理に出すようになったらどうしようもないもんね。そんで諦めました。あ~あ、馬鹿だな~。今私が患者さんに使っている気管カニューレ、アメリカ製だけれど1ヶ12.800円です。アメリカで買えばどれくらい安いのか聞いてみたいね。


当院担当の税理士さんに云われています。診療所を新築したときの投資が7年経った今でも尾を引いているって。だけどやっぱり設備投資をするのは患者さんのためでしょう? 勿論私も綺麗なところで仕事がしたいけれどね。診療所は改築、新築をすると平均5年くらいでいろいろ不満が出てきてまた改造したくなるんですって。自慢ではないですが、私はもう7年経過しましたけれど、今のままで良いと思ってますよ。きっと設計が良かったんだな。実は設計したのは私です。初め建築会社が設計図を起こして持ってきたんですが、それを見たら、患者、看護婦、カルテの動線はめちゃくちゃ、車椅子でも使えるバリアフリーのトイレの注文を出したら、診療所のど真ん中に2メートル四方の身障者専用トイレがド~ン!とあるんです。「バッキャーロ~! こんな診療所使えるか!」って怒鳴りつけて没にしたんです。それで私がMacで”一軒楽着”って云うソフトを使って作り直し。それをプロの設計図に起こし直してもらって出来上がったのが今の診療所なんです。最近、他の先生から医院設計について意見を求められることもあるんですが、後で修正はなかなか利かないから設計については充分すぎるほどの検討が必要だよと云っています。本当にそうなんです。

 今や医院開業のためのマーケティングが盛んになって、例えばどこどこで何科で開業すると1日の外来患者が何人、よって収入がどれくらい、だからいくらいくらまで投資しても回収が可能、なんて具体的な数字がコンピューターでポンと出てくるんですって。実際にこれを利用した友人がかなり正確に出るよ、なんて話していました。医師個人の性格とか商売上手かどうかなんてことは反映されないんですかねえ? もしその数字に満たないような結果が出れば、それは医者のやり方がまずいからだよときっと云うんでしょうね? そのコンピューターにはデータとして、その周囲何km四方の住人の数や老人、子供の割合などが全部入っているんですって。だから子供の少ない地域での小児科とか、若い既婚女性のあまりいまりいないところでの産婦人科なんてのはダメですよ~と云う答えがコンピューターからはじきだされる訳なんです。もっとひどいことを云うと、○○医院の院長は何歳でその子供は医者になっていないから、あと何年位したら院長は死んで、その後は楽ですよ~なんてデータも入っているんですって。下手するとあの院長は高血圧と糖尿病があるから、そう先は永くないよなんて計算もしているのではないでしょうか? だから私もたまに近所にすっごい腕のいい若手医師が開業して患者を取られて呆然とするなんて夢にうなされることもかつてはあったんです。何故か最近はあまりその夢を見ません。自信がついてきたのかな? 以前からこのホームページに書いてきましたように、我々医療機関も競争を強いられるようになってきました。医療は3次産業、つまりサービス業に分類されます。そのうちに検査の予約を1週間以上前にしたら早割で1割値引きしますよ、なんてことにならないでしょうか? 集客ならぬ集患の秘訣なんて記事が医療経営雑誌に掲載されることがありますが、そんなサービスの良すぎるクリニックって皆さんどう思われます? な~んか変な方向に、変な方向に流されていってしまうような気がしてならないのですが............。