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セカンドオピニオン

 最近医療環境の中でSecond Opinionと云うことがよく話題になります。”二番目の意見”つまり一人の医師に診断をしてもらい、念のため? 或いは異なる治療方法を期待して? 又別の医師の診断、治療法を仰ぐことです。むしろアメリカなどではこれが常識化しつつあります。正直なところ、私は特に日本における医療システムの中ではこのやり方にあまり賛成できません。通常同じことを心の底から相談できる複数のかかりつけ医を持っている一般の人ってあまりいないと思います。まずは一番親しい先生に患者さんは相談するはず。二番目に意見を求めるのは、二番目に親しい先生のはずです。私は地域社会においてまず一番に相談に乗れる医者を目指しています。もちろんより専門家である私の知る先生から、その患者さんに複数の選択肢を呈示して貰うことは多々ありますが。それから普通に考えても、日本の医療は殆どが保険診療です。仮に全ての患者さんがSecond Opinionを求めることになれば、単純に2倍とはならないでしょうけれども、相当の医療費増になるはずです。政治家や官僚の愚かな政策によって保険医療は崩壊寸前、ましてやこれから流行し、死ぬ人も出て来るであろうインフルエンザの画期的な治療薬ですら保険適応にしないと云う状態なのです。また、最近時々私のクリニックでもよくあることなのですが、2週間分の処方を持って帰って数日後、薬を紛失してしまったからもう2週間分出してくれと云って再来される患者さんがたて続きました。このような場合、特殊なケースを除いて私はお断りしています。医療費の7~8割は紛失した患者さんのお金ではないのです。会社の保険料や税金から出ているお金なんです。だからその様なときは「私も薬局に電話しておきますから、薬局に相談して自費で薬を貰ってください。」と云っています。厳しいような云い方ですが、自転車のかごに入れておいた野菜やお肉が盗まれてしまったら、やはりもう一度買うしかないでしょう? 保険診療でやっていることをしっかり自覚していただかないと、結局コスト意識を全く持っていない官僚達が「老人保険でも患者さんにコスト意識を持って貰うため。」と云う言い訳を与えてしまい、引いては保険診療の負担分増に繋がってしまうと解釈しているんです。

 確かにそれぞれの医師によって治療方針が異なることが結構あるはずです。その人に合う薬、合わない薬、時には使ってみて初めてその人に対する効果や不利益がやっと判断できる場合、悪い云い方をすれば試行錯誤が存在することも確かです。でも患者さんからよく話を聞いて、それを分析して、そしてその患者さんに最も適した策を講じる、これが我々の仕事です。今では我々に対する一般の方々からの目も厳しくなり、形の上では幾つかの治療方針の候補を並べ、その中から患者さんに選択してもらうと云う手法が、特に最先端の病院で取られるようになってきました。「あなたは胃癌です。手術して病巣をとる方法と、手術以外の方法とがあります。勿論、根治を目指すのであれば手術が一番良い方法ですが、どうしますか?」と聞かれたらあなたはどのようにお答えになりますか? 殆どの人は即答で手術を選択されるでしょう。私だってそうです。私が勤務医だった時代は「手術をしましょう。私も精一杯努力しますから、あなたも頑張ってくださいね。」と云うことで、患者さんとの関係も上手く行っていたのです。確かに胃癌に対しての内視鏡的な治療法が進んできましたから、選択肢は増えました。しかし内視鏡的な治療法を取るべき患者さんに対して開腹手術を薦める医師はいないと私は信じています。少なくとも私が自分の患者さんを送る病院においては。もしも、それが理にかなわない方法をとるような医療機関であるならば、あなたはその医療機関を選択した時点でレールからはずれていると云わざるを得ないのです。だからこそ信頼できるかかりつけ医を持つように以前からお薦めしている訳です。

 結論として、私個人的にはSeccond Opinionと云う考え方はあまり好きではありません。Seccond Opinionを求めなくても良いような信頼できるかかりつけ医を持つことを是非お薦めしたいと思います。弁護士さんや税理士さんにSeccond Opinionを求める人って殆どいないでしょう? もしSeccond Opinionが定着してしまえば、今度は必ずThird Opinionを求めるようになってしまいます。それだけ自分の命を任せる医師の選択には慎重になって欲しいと云うことです。Third Opinionまで求めれば3つの治療方針が呈示され、結局ご本人が戸惑う結果になりかねません。実際にどの方法がその患者さんにとって良いのか、その答えが確立していない分野だって多々あります。だからこそ、私のOnline Q&Aの回答も最終的には主治医によく相談して下さいと云う結論に終始してしまう訳です。国の政策構想でも繰り返しかかりつけ医を持ってくださいと云われています。だからこそ、風邪で大学病院へ行くなんざ愚の骨頂だと思う訳です。日頃からコミュニケーションを取っている医師であれば、普段のあなたをよく知っている医師であれば、適切なアドバイスをしてくれるでしょうし、その医師自身が手に負えなければ、その医師が信頼する他の専門医を紹介してくれるはずです。自分を信頼してくれる患者さんに変な別の医師を紹介するはずはないでしょう。医師にとって患者さんは可愛いものなんです。愛する人に辛い想いをさせようとする人がいますか? 私自身、外来で話しをするとき、いつもと同じ顔色か、同じ表情か、同じ話し方かを観察しています。そしていつもと違うところがあれば本人に何か調子悪いところがあるのかどうかお尋ねしています。かかりつけ医を転々と変える人(ドクター・ショッピングと云います)では、普段その人が調子の良いときにどうなっているのかが分かりませんからね。年に1回、検診に来られるだけでもなんとなく過去と違う雰囲気と云うものは伝わってくるものなのです。是非皆さんも気軽な相談相手として、信頼できるかかりつけ医を持つようにしてください。そうすればSeccond Opinionなんてことで悩む必要はなくなると、私個人は考えています。是非ご意見を下さい。