診療報酬値下げ確定?
小泉内閣が来年の春に我々医療機関への診療報酬を下げることを確定したようです。やむを得ませんね。私は前から云っているようにそれには反対しません。むしろ患者負担増をより軽くしてくれるのであれば、その分を被ってでもと云う気持ちを持っています。もちろん私にも報酬は必要ですが、診療行為の単価が下がるよりも、患者さんに受診抑制がかかることの方が社会的には問題と思いますし、更に自分には痛いと考えます。いくら診療報酬が高くたって、負担が重く患者さんが来院されないのであれば話になりませんからね。単価が下がってもより患者さんが多く来てくれれば良いわけですから。来院患者を増やすための努力、患者さんを診療する事への労力は惜しむつもりはありませんよ。
もともと国民皆保険には無理はあったんです。かつて国の赤字3Kと云うのがありました。国鉄、米、国民健康保険の3つです。しかし私は国民健康保険だけはこの3つの中で違う意味を持っていると思います。国鉄は私鉄よりも料金が高かったんです。民営化され、経営がスリム化されることによって少なくとも国鉄時代よりはましな経営状況になりました。国鉄からは余剰な人員が排除されました。国鉄は国民にサービスを提供するためではなく、そこに働く余剰な数の人間を養うために苦しんだわけです。そして米、ご存じのように外米の方が国産米よりだいぶ安いですね。これも国民が主食たる米を安く手に入れるためではなく、主食を維持するために生産者に高い収入が得られるように、そして主食を継続して生産してもらうように国が高く買いとっていたわけです。そして国民健康保険、これは医者を養うために機能していた? 違うでしょう? これこそが国民が安くて良質な医療の提供を受けることが出来るように機能していたわけです。日本の医療は繰り返しになりますが諸外国に比べ、その単価はものすごく安いんです。そして長寿世界一の地位を確保するほど良質なんです。赤字とされた国鉄や米と違い、やましいところは全くないのです。しかも薬価差益や医師優遇税制を導入してまで、底値まで安く値切られていたんです。国民医療費30兆円? 安いもんではないですか? 国債発行をしぶる程度の金額で世界最高水準の医療を受けることが出来るんですよ。小泉君、偉そうなこと言ってないで少しは感謝してくれよな! そんな国民健康保険が美容と第三者行為を除く全ての医療をカバーし、その一方で医学はドンドン進歩し、ついには人の臓器をまた再利用する、そして更には人工臓器を用いる、お金がかからない訳がないではないですか? 電車や米がそれだけの日進月歩をしてきましたか? 電車は3倍のスピードになりましたが、医療の進歩は3倍なんてものではないでしょう? 一緒にしてくれるな!ってのが私の本音です。
ただ、例によって新聞報道では、診療報酬を下げる理由について、患者負担増をするのに診療報酬を下げないと国民の納得が得られないからと書いてあります。どうしてこんな云い方しかできないのですかね。「財源がないから協力してください。」と云う云い方をどうして出来ないのでしょうか? いつでも交渉を優位な立場で進めたいと云う姿勢が見え見えです。それだったら天下った官僚を肥え太らせる特殊法人からのゼロ回答の方がよっぽど納得できないぜ。必要もない特殊法人をぶっ潰してから偉そうなこと云えよ!! そう云うからには公共料金も下げろよな。公務員にも目一杯痛い想いをしてもらってさ。公僕だし、お前らの部下なんだからそれくらいのこと出来るだろう?!
まあここぞとばかりに今まで僅かずつ値上げしてきた診療報酬がかなりの減額になるのは想像に難しくありません。恐らく最初ふっかけておいて、日本医師会とすったもんだの交渉をして、ある程度のところで落ち着くのだと思います。しかし、議論には充分な時間(と云ってもあまり時間はありませんが)をかけて下さいね。また薬価改定やインフルエンザの公的負担のように直前まで何もしないで、後はごり押しなんて事はないようにしてくださいよね。まあそうなる公算が大きいけれどね。今、当院の受付でも患者負担増の医療改悪に反対する署名を集めています。もうかなりの数になりました。これがどれほどの効果を現すのか、見守りたく思っていますが、国民皆保険崩壊の契機にならないことをただひたすら願っています。