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ハウプト クラーゲ

 ハウプト・クラーゲって医療関係以外の方はよく分からないと思います。ドイツ語でHaupt は主、Klage は訴え、英語でChief complaint、そう、主訴と訳します。我々医師が初めて患者さんを迎え入れるとき、必ず患者さんには主訴があります。おなかが痛いとか、咳が出るとか、むくんでいるとか、おしっこに血が混ざるとか。今回はこの我々が患者さんに医療を提供する時に患者さんから聞き出す情報の中で最も重要な主訴について書きたいと思います。特に健診とか診断書の請求とかを除いて、患者さんが医療機関を受診するときには、来院される身体的な(時に精神的な)理由があるわけです。その主訴を初めに伺い、その経過を聞いて、つまり問診をしてその後の診療を進めていきます。問診だけで約70%の診断がつくと云われています。だから、皆さんも初めて病院やクリニックを受診するときは、これをよくまとめて話が出来るように準備していってください。たまにいつ頃からこんな症状があって、それがまた何時何時からこんな風に変わってきたなんてことを紙に書いて来られる患者さんもいらっしゃいます。これは本当に助かります。患者さんがそのメモを見ながら話していると、「ちょっとそれを見せてください。」なんて云って取り上げ、そのままカルテに写してしまうこともあります。

 この主訴をうまく我々に伝えてくれると本当に診療がスムーズに行きます。逆もたまにあります。延々といろいろな出来事を話して、「まあこれは○○先生に診ていただいたからいいんですよ。」なんて云われた暁には、時間とカルテの紙の大いなる無駄になってしまします。結構あるんですよ。「どこどこの××さんは本当にいい人でねえ、よく面倒を見てくれるんですよ。」そんなの関係ない! ちゅ~に。ああ、そうそう、こんなこともあります。やはり延々といろいろな症状の話を聞いているうちにどうもおかしいなと思って、「それって誰の話ですか?」って聞いたら、自分の息子の話だって。そんなのいいんだよ! あなたはどうして今日ここに来たんですか?! ってなことがこれまた結構あるんです。
 新患の患者さんなら最初に交わす話ですから、その人がどんな人なのか? 性格や云ってみれば知性の部分まで探りを入れることになります。やはり人間同士のお付き合いですから、第一印象って大事ですよ。私の大学時代の臨床実習で非常に言葉使いの荒い教授がいらっしゃいました。よくよくその教授の話を聞いてみると、患者さんのレベルに合わせて、自分のレベルを調整しているんだそうです。なら、レベルの高い? 人にはレベルを上げて接するのかなあ? そうは見えなかったけれど.........。こんなこともあります。ある日、私のクリニックに若い男性の新患の患者さんが来院されました。診察室にて、医師:「ハイ、どうなさいましたか?」患者:「チンコが痛いんです。」医師:「...............。」、もうちょっとましな云い方があるんじゃないでしょうかねえ? 確かに私としては、この患者さんの主訴はその一言で率直に分かりましたし、瞬時にほぼ診断も数ヶの疾患に絞り込むことが出来ました。でもやはり初対面なんですから、第一印象ってものすごく大事ですよね。せめて尿道とかペニスとか、うんと譲ってオチンチンくらいにならないですかねえ?

 気の利いたクリニックや病院では問診票があります。待合室で事前に氏名、生年月日、性別にはじまり、その中で主訴は何かとお尋ねする記入欄があり、更に既往歴や薬のアレルギーなど諸々を書いて貰い、患者さんを診察室に入れる前にサッと我々が見るだけでスムーズに事が進むようにします。私もいずれこの形にしたいと思っているのですが、患者さんに落ち着いて記入して貰えるスペースがないので、現在ではナースが少し手の空いている時には気を利かせてくれて、事前に患者さんと話をし、私に教えてくれることがあります。

 3分診療と云われるくらい我々も一人一人の患者さんと話をする時間が限られています。勿論、その短い時間の中で、無駄と漏れがないように充分配慮しているつもりなんですが、皆さんにも是非効率よく診療が出来るように協力をいただきたく思います。とどのつまり、我々は患者さんからの話を聞くのが商売なんですからね。そして、人間同士の良い関係を続けて行きたいと思います。