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患者さんは何を感じているか?

 私が購読する医学雑誌の中で非常に興味を引かれるものがあり、熟読しました。医療機関において患者さんがどのように考えているのか、何を悩んでいるのか、そんなことをアンケート形式の設問で問いかけ、その結果の統計をとった記事でした。自分の診療所に当てはめ、一喜一憂してみました。

 このアンケートの中でかかりつけ医を持っていると答えた人が9割、その中でそのかかりつけ医が大きな病院ではなく、医院やクリニックだと答えた人が半数以上いました。

 患者さんが見ているアメニティとして、待合室の中で不安、憂鬱を感じる理由が挙げてあります。
◎混雑している~当院ではなるべく患者さんの待ち時間を少なくするように努力をしています。以前よりスタッフを増やし、検査や処置は別室でスタッフに任せたり準備をさせたりして、私が部屋を移動することによって診療の効率を上げるようにしています。そして患者さんの順番が分かるように番号札を渡し、現在診療中の患者さんの番号を表示し、大体の目安が分かるようにしています。
◎風邪の人が多い(うつるのが不安)~限られた面積の待合室ではちょっと厳しい要望です。待合室と診察室では空気清浄機を廻していますが、これで皆さんの不安が解消できるとは私も考えていません。気の利いた小児科では感染症の患者さんをひとまとめにして別室にと云う処もあるようですが、それでは麻疹と風疹と水ぼうそうとおたふく風邪の患者さんをゴッチャにして良いのか? と思ってしまいます。やはりマスクをしていただいたり、帰宅後手洗いやうがいを励行していただくしかないように思います。皮肉を云うなら、そんな風邪が医者にうつることは誰も心配してくれません。
◎空調が悪くムッとする(病院臭い)~病院臭いと云うのは恐らくはクレゾールの匂い、私は小さい頃からこの匂いをかいで育ったので、決して嫌いな匂いではないのですが。勤務医時代飲みに行ったお店で初対面の女の子に、私の職業を一発で当てられたことがあります。「どうして?」って聞いたら「お医者さんの匂いがするから。」と云われて驚いたことがあります。当院では空調以外に1フロア全ての空気を循環させるブロアー、更に前述の空気清浄機を廻しています。
◎高齢者が多い~これはやむを得ないでしょう。老人に来るなとは云えませんから。これは若い人のエゴですよ。
◎診察室の声が聞こえる~当院の診察室や他の部屋への入口のドアは防音効果の高い鉄扉です。通常の会話はこれで大丈夫だと思いますが、老人が開けるにはちょっと重いと云う不評もあります。
◎椅子の座り心地が悪い~当院の待合室のソファは座り心地が良いと評判です。診察室の椅子は残念ながら丸椅子、これは背中の診察がしやすいとか、サッと座ったり立ったり出来るのでやはり使い勝手が優先になります。私も患者の椅子に座ったことがありますが、やはり座り心地は良くはありません。ただそんな永い時間ではないのですから、それくらいは我慢してくださいよ。
◎受付の対応が悪い~これは当院はものすごく厳しく教育しています。私に怒鳴られて泣いてしまうスタッフも。受付は診療所の顔ですから。数多くの面接をして選び、そしてその後も患者さんの対応については事細かに私が指導しています。今のスタッフは良くやってくれているはずです。
◎看護師の対応が悪い~こちらも大丈夫なはず。今の彼女達は本当にしっかりやってくれています。
◎清潔感がない~掃除、整理整頓、しっかりやっていますよ。
◎近所の人が多い~??? こんなことを云われても困りますよね。それがイヤだったらそう思う人が遠くに行くべきではないでしょうか? 当院ではご近所同士仲良く話している光景をよく見かけます。現代社会において近所づきあいがなくなってトラブルになることが多いのではないですか?

 診察室がどのようになっていれば診察を受けやすいですか?
◎他の患者さんに診察室の声が聞こえないように仕切られている~待合室との間は大丈夫ですが、処置室とはちょっと声が聞こえてしまいます。そんな時は私も少し小さな声で話していますが。
◎BGMが流れている~もちろん流しています。有線放送にCD、BOSEのスピーカーを13機天井に埋め込んであります。有線でも同じチャンネルばかり流していると院長は受付のスタッフに怒ります。私はモダンジャズが好きなのですが、時刻、季節まで勘案して選曲してくれるくらい気が利けばと思っているのですが。それにアメニティとして水槽や絵を置いてあります。そろそろ絵を替えたいとは思っているのですが、なにさま先立つものがありません。
◎診察室の中に医師だけがいる~これは次の質問と患者さんの個人的な考え方の違いによるものですが、原則1人はナースが診察室につくように云っています。ましてや女性が裸になったり、下腹部や肛門の診察の時は必ずそばにいるように指導しています。これは我々の間では常識ですが、女性患者から変に言いがかりを付けられることもないわけではありませんから。逆に男性患者さんが女性スタッフの前ではあまり話したくないような内容であれば、さり気なく診察室から出ていくようにも指導しています。EDの問診の時には必ず私1人しかいません。男性患者さんがナースの顔をチラッと横目で恥ずかしそうに見たときは、当院のナースはサッと消えます。
◎看護師や付き添いの人が同席している~基本的にはナースが必ずいます。
◎医療機器が目につかない処に置いてある~これはどうですかね? ある程度の設備が整っていることをアピールする必要が我々にもあると思います。私の診察室にはコンピューターを初め、機械はたくさんあります。
◎明るい照明~照明には気を遣っています。切れた電球はなるべく早く取り替えるようにしていますし、また待合室は間接照明なども使いなるべくリラックス出来るように配慮しています。

 現在の通院先の診療の時の医師の態度は、あなたを1人の人間として尊重したふさわしいものだと思いますか? ふさわしい態度だと思う86%、ふさわしくない態度だと思う13%~私は充分気を遣っているつもりでいます。臨機応変に、若い人には気軽に友人のような感覚で、老人にはゆっくりと話しながら頼りがいがあるように、そして子供にはその年齢の処まで自分を落として話しています。特に綿密な説明を要するのは子供を連れてきた母親、最近の学校の先生からよく話を聞きますが、なかなかこのケースが一番難しいように思います。私は”お母様方ネットワーク”と勝手に命名していますが、近所付き合いの中でこのネットワークほど良しにつけ悪しきにつけ威力のある広告媒体は他にないと考えています。特に当院では小児科の看板を揚げていませんが、小児科や予防注射のために来院する母子も多く、万が一そのお母さんにまずい印象を与えるとその効果は迅速かつてきめんに出てくることを覚悟しています。小児科が少子化に伴い患者数が減り、それに伴い小児科を選択する医師が減り(私が医師になる頃から小児科の将来の展望はあまり良くないと云われてきました)、ましてや小児科で開業するのは難しいと云われる時代、特に医療政策の中では小児科が比較的優遇されながらも(恐らくは学会の政治に対する発言力が強い?)小児科を新規の医師が敬遠する理由はここにあるのかも知れません。私が小児科の臨床実習で先輩医師から教わったことは、子供と一緒に母親も治療しなければならない(もちろん診療の説明の中で)、しかし最近の母親は自分の子供をペットのような感覚で扱っていると云う矛盾したものでした。開業して既に15年目、更に小児科領域の患者が増えるにつけこの矛盾に直面すると同時に、その時の先輩医師が云っていたことが少し理解できて来たような気がしています。一方で女子医大の心臓手術のような事件を聞くにつけ、本当に難しい領域だと考えています。

 先日、テレビのドキュメンタリーであるレストランチェーンの内幕に密着して取材する番組がありました。売上げ至上主義であり、全てマニュアル化されたノウハウ、そして常に目標達成を迫られ、達成できなければ容赦なくペナルティが課せられる、本当に厳しい客商売の裏側をまざまざと見せつけられました。そして私の仕事、患者さんに尽くすと云うことでは何ら変わりがありません。決して売上げ至上主義ではありませんが、一生懸命やればやはり右肩上がりに診療報酬は上がるはず、むしろ報酬は一生懸命やった後に付いてくると考えていますが、そう思っていられるうちが幸せなのかも。これから先、生き残りをかけてどの医療機関もしのぎを削るようになっていくようです。そんな中で”患者さんは何を感じているか?”と云うのは我々医療機関に課せられた永遠のテーマと云っても過言ではないと思います。まだまだ私のクリニックは成長しています。頑張りますよ。