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治らない風邪


インフルエンザの季節です。インフルエンザでない風邪の患者さんも多い今日この頃です。咳、鼻水、喉の痛み、発熱、頭痛、筋肉・関節痛、嘔気、嘔吐、下痢、もうイヤな症状ばかりですね。よく「1日で治す薬ありませんか? 明日はどうしても休めないんです。」と40度の熱のある患者さんがおっしゃいます。「申し訳ありませんねぇ。そういう薬はないんですよ。風邪を1日で治す薬を作ったらノーベル賞ものです。」テレビのCMではありませんけれど、風邪は1に睡眠、そう、よく休むことなんです。患者さんも分かっちゃいるけれど一応我々に聞くのでしょう。ハードスケジュールをこなしながらついでに風邪も治す、これは無理ですよ。2週間毎に高血圧の患者さんが来院して、風邪がちっとも良くならないと私を責めます。風邪薬はだいたい処方するのが3~4日分、多くても5日分です。「思わしくなければ薬がなくなる前においで下さい。」と私はよく申し上げますが、来院されるのはいつもの薬が切れる2週間后。私こそ風邪を1日で治す薬が欲しいと思います。「風邪の具合の方は如何でしょうか?」という質問に「ああ、良くなりましたよ。」と云っていただけるのはごく僅かの患者さんです。まず治ればこちらにはいらっしゃいませんからねえ。

 それからよく悩まされるのは、「先生、注射打って下さい。」とおっしゃる患者さん。「何の注射?」と尋ねると、「風邪の注射。」と云われます。風邪の注射ってないんですよ。確かに注射神話みたいのがあって、飲み薬よりも注射の方が効きそうだというお気持ちは理解できます。しかし、昔と違って今は経口薬の効果がよくなり、なるべく痛い思いをしたり、副作用を懸念して注射は避けるようになってきています。40度以上の熱が出てフウフウ云っているような人には、ピリン系の解熱剤を注射することも時にはありますが。困るのは何でもいいからとにかく薬を注射して下さいとおっしゃる患者さん。注射をするまでは帰ろうとしません。私は困ってナースに「アスコルビン酸500mg吸って。」とオーダーします。ビタミンCですがまあ風邪には良いでしょう。注射するときは「これよく効きますよ!」と一言、これって結構効果大です。

 抗生物質を使うか使わないか?これも医者の中で諸説紛々です。抗生物質は細菌を殺すもの、殆どの風邪がウィルス性ですからこの薬は直接風邪には効きません。ただ喉を見て発赤している人、白苔といって、細菌性の咽頭、喉頭炎を起こして白くなっている人や気管支炎、肺炎の人は抗生物質の適応になります。しかし多くは細菌による2次感染予防の目的という、医師側にとって苦しい言い訳をつけ加えて使うことが殆どです。そういう使い方はけしからんと断言する偉い先生もいらっしゃいます。

 風邪の初期には漢方薬の葛根湯がよく効きます。これは経験的にも自信を持って云えることです。面白いもので、我々が使う漢方薬のエキス顆粒(ツムラやカネボウの漢方製剤)はその人に合っている薬であれば飲み難くありません。美味しいとさえおっしゃる患者さんもあります。まずくてオブラートに包んで飲んでいるなんて漢方薬はあまり続ける甲斐がないんです。私の経験ですが、葛根湯という薬は普段味見をしても決して美味しいものではありません。しかしちょっと鼻がつまって風邪をひきはじめたかなという時に飲んだところ、何か甘いようなシナモンの香りがするような、美味しく感じたことを覚えています。世に出ている市販の風邪薬で、初期症状によく効き眠くなりにくいというふれ込みで出ている薬は、成分を見てみるとだいたい葛根湯の成分と一致します。

 今風邪を1ヶ月半続けて治療して治らずに私自身悩んでいる患者さんがいます。ご本人はこうおっしゃってます、「煙草を止めれば良くなることは分かっているんだよ。」「義理があるから忘年会は出なきゃならないんだよ。出れば飲まないわけにはいかないからねえ。」.............。ご苦労様です。でもそれでは風邪は治りませんよねえ。

 ひとつ、昔の話ですが、患者さんに謝っておきたいことがあります。10数年前の大学病院勤務時代、あるバイト病院であったことです。やはり40度近い熱を出しているのに、野球のユニホームを着て外来に来られた患者さんがいらっしゃいました。かなり辛そうでした。診察をしながら「酷い熱ですよ! こんな状態なのに何故野球なんかして遊んでいるんですか?!」と云ってしまいました。一緒に付き添って来た人が「いや~、仕事なんですよ。」と一言。ユニホームの胸をよく見てみると、見慣れたGIANTSの文字が.........。アチャー、プロの選手の人だったんですね、勿論その場で私の失言を取り消し、お詫び申し上げました。この場を借りてもう1回お詫びしようと思います。ゴメンナサイ!