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重税感月に1回来るイヤなもの


我々開業医にとって月に1回来るイヤなものがあります。オンスと呼ばれていますが ..........。それは月末まで我々が行った診療に対して診療報酬の請求をするために作る請求書(レセプト)をまとめなければならないことです。勿論、一般の会社でも商店でも同じでしょうが、我々の場合は健康保険を介するため複雑、かつ様々な注意点があります。これをしなければ、我々も収入が得られず、避けて通るわけにはいかないのですが、イヤになるほどいろんな制約があります。 

 日々診療所の外来の受付で、その日に行った診療行為について、当院の女性職員たちにコンピューターへの入力をしてもらいます。我々の診療行為は全て点数化されており、例えベテランの医師が行おうと、研修医が行おうと点数は同じです。行った診療行為についてすべての点数をコンピューター入力し、患者さん一人毎、その日毎にまとめます。月末に最後の患者さんを診終わった後、コンピューターに1ケ月分のすべての計算をさせています。昔はこれを手書き+電卓でやっていた様です。だから月末の父の機嫌の悪いこと、悪いこと。オンスたる所以です。コンピューターを使っても2~3時間かかる計算だったから大変だったでしょうね。当院ではこれは私の仕事です。Macでやっているので、時には途中でシステムエラーを起こし、もう出来ただろうと思って見に行くと、最初の方で止まったままなんてことが何回もありました。それが出来上がると、今度はレセプトのプリントアウト。保険種別に患者さん一人につき1枚のレセプト(診療報酬請求書)を印刷します。これも保険種別によって5~6枚から数百枚になることも、時間がかかる場合にはプリントを指示してその場を離れます。そして例によってもう出来ただろうと思って見に行くと「ポストスクリプトエラーです。」私は個人的にポストスクリプトエラーをものすごく憎んでいます。「バッキャロー! ポストスクリプトに幾ら注ぎ込んでいると思っているんだ!」と真夜中の誰もいない診察室で一人叫ぶこともしばしば。エラーが起きて無駄にした時間の分、私の睡眠時間が減ることになります。Privacyの「Macintoshにはまったわけ」の中でもお話しましたが、当初Macを初めて手に入れた時にはポストスクリプトプリンターは高くて手が届きませんでした。当時唯一の日本語ポストスクリプトプリンター、Laser Writer NTX-Jは119万円もしました。とてもとても買えません。しばらく経って、ライバル機が出てきて少し値段が下がりはじめたころにやっと買えましたが、それでも結構高かったです。しかし中には在庫処分品で、ポストスクリプトプリンターで19万8千円というのがあり、これは私も手に入れました。もう今や動きませんがこれはお買得でした。あまり長生きはしませんでしたが、元は取ったと思います。

 さて話を戻しましょう。印刷し終わったレセプトは、再度受付の女性達に渡し、カルテと抱き合わせにして、間違いがないか確認します。これは私はタッチしませんが、彼女達にとっては大仕事です。ここで絶対やってはいけないのは、レセプトの病名もれ。例えば慢性疾患、つまり心臓病や胃潰瘍などで当院へ通院中の患者さんがたまたま風邪をひいて風邪薬を処方したとします。カルテに急性上気道炎とか咽頭喉頭炎とか記載します。このカルテの記載洩れとか、カルテに書いてあるのにコンピューターに入力し忘れたりすると、風邪をひいていないのに風邪薬が処方されたことになってしまいます。これを気付かずに、健康保険の支払い基金に提出してしまうと............。これからが私にとって非常に不思議なことなのですが、診療報酬を支払ってもらえないのは仕方ないにしても、再度間違いでしたと請求しても絶対に受け付けてくれないのです。ワンチャンスなんです。他の皆さんの社会の中で請求書が不備だからといって、お金を払わずにすむところってありますか? 例えば税務署から来る税金の支払い通知書、いつぞや東京都下某市でコンピューターの入力ミスから二重請求が行ってしまったことがありました。この二重請求を受けた人たちは、間違いに関する部分で税金を払わずに済んだのでしょうか? また更に不思議なことに、これを我々医師会の側もしょうがないということで納得してしまっているんですよ。これがすべての請求書に有効なのであれば、私は自分が受け取った請求書をすみからすみまで全てもう1回見直します。そして保険と同じように過誤調整と称して、次回支払い分から差し引きます。これって本当に我々はやられているんですよ!

 こんなこともありました。永年高血圧で当院へ通院していただいている患者さんが胃ガン検診でひっかかり、要精密検査となりました。私の市では市の胃ガン検診で要精密検査となった患者さんに対しては、健康保険の本人負担分(現在の社会保険の社保本人なら2割、国保なら3割、老人保険なら1診療につき530円4回まで)が市から支給され、患者さん本人からは負担金を徴収しなくても良いことになっています。つまり我々は市長から依頼を受けて検査をやり、その結果を市長に書面でもって報告する形になっています(もっとも市長さんがその報告書を読むわけではないでしょうが)。この患者さんについて私は胃カメラを施行し、結果早期の胃ガンだったので、某病院を紹介し、手術、術後も良好に経過し元気になりました。しかし私はうっかりしてこの患者さんのカルテに「胃ガン疑い」の病名を書き忘れてしまいました。支払基金からの報告で、胃カメラの適応無しということで胃カメラに関する点数を全部さっぴかれてしまいました。当時は社保の本人は1割負担ですので、内視鏡+生検で2万数千円の9割です。ずうっと高血圧で2週間毎に顔を合わせている、永い付き合いの親しい患者さんですから、話しに夢中になり、私もついうっかりしてしまいました。まあこれは市より依頼されて行った検査ですからまあゴメンナサイということでもう1回請求を出しました。再請求の1年後、「この症例では認められません」と書類が送られてきました。1年待ってたった13文字ですよ! だから、この病名洩れには今十分注意を払っています。勿論当院だけではないでしょうけれど。最近では我が診療所の優秀な女性職員達が、「先生、これ病名が洩れてますよ。」と持ってきてくれますが、それでも月数ケ所は出てきてしまいます。

 さてこのカルテとの付け合わせが終わると、また私の所にレセプトの束が戻ってきます。これを期限内にまとめ、合計でいくらいくら払って下さい、という総括的な請求書を私が書いて、医師会に持参し、その2ケ月後(1ケ月後ではありません)に私の口座に間違いをさっぴいた金額が振り込まれることになるわけです。だいたい、総金額の1%位が何だかんだとイチャモンを付けられて削られています。しかも削りますよという通知がこのオンスの時期に重なってすごいストレスです。今レセプトを受け付けた支払基金は、業者を入れて金額を削る作業をさせています。きっと彼等は歩合制なのでしょう。医学的知識がないからこういうことをするんだと思われる査定が多い今日この頃です。世の女性は月に1回イヤな思いをしておられますが、男である私も同じようにイヤな思いをしているんですよ。それも女性と同じようにすごいストレスなんです..........。