医師の正義感


　今日読んだ新聞に出ていた記事のことです。昨年、集団で婦女暴行事件を起こし、慶応大学の医学部を退学になった学生がいつの間にか千葉大学の医学部に入学しており、入学後に婦女暴行事件のことが明るみに出て、入試の面接の際に虚偽の答えをしたかどで再び退学になり、それを不服として千葉大学と学長を相手取り提訴したと云う記事が出ていました。まず私が驚いたのは、7月に退学になった学生が、その翌年にはもう難関の千葉医大に入学していると云う事実でした。正直なところ、自分の大学2年、3年生の時を振り返ってみて、大学ののんびり（医学生たるもの、そんなことは云ってはいけないのかも知れませんが）した生活から、再度医学部の受験に成功するなんざ、それも難関の国立医学部で、これはすごいことだと思います。私自身、同じ自分の大学入試にも合格できないのではないかと思います。やはり慶応の医学部はすごいんだなと改めて感心してしまいました。すごいよね。

　でも保護観察処分中の学生が、再び国立医学部を受験してまた合格してしまう、つまり、医師になるべく資質が問われず、偏差値だけで合格してしまう、しかも保護観察処分になっていることすら隠し通せること自体、医学部受験のシステムの欠陥があると云わざるを得ないのではないでしょうか？　もちろん、本当に彼が婦女暴行事件を起こしたかどうか、私は知りません。彼の立場に味方するなら、或いはたまたまその場に居合わせただけかも知れません。悪い言葉で云うなら、或いはたまたま運が悪かったと云うことであったのかも知れません。今や同じようなことをしていたと噂される男優が、テレビドラマの中で良い役を演じているのも事実です。しかし、今仕事は勿論一生懸命やっているつもりですが、遊びも目一杯楽しんでいる私が云うのもなんですが、やはりそんなレッテルを貼られた彼に、ましてや名門大学を卒業して医者になって欲しくはありません。むしろ一般の医師ではない人の方がよほど彼に対して厳しい言葉を浴びせかけることではないでしょうか？　もし大学がその気になればそのような犯歴のある学生をnegieren（独語で拒否する、否定するの意）するのは、それほど難しいことではないと思います。やはり偏差値偏重の気運が、今の欠陥医師を作り出していると云われても、反論の出来ないところではないかと思ってしまいます。

　慶応大学医学部の集団婦女暴行事件が発覚し、テレビで大々的に報道された時は私もショックを受けました。何にショックを受けたかと云うと、これも皆さんには怒られてしまうかも知れませんが、慶応大学の医学部長が、マスコミの罵声を浴びながらただひたすらお詫びと答弁をくり返していたことについてなのです。と云うのは、当時（現在もこの方だと思いますが）の慶応大学医学部長は猿田教授と云う方で、内科領域での世界的権威、まさにカリスマ的な存在なのです。確かに自校の学生が起こした不祥事にトップがお詫びの記者会見をするのは或いは当然のことかも知れませんが、酷い罵声を浴びながら深々と頭を下げる猿田教授を見るにつけ、私自身はマスコミに対して「お前ら如きにとやかく云われなければならないような人ではないんだ！」と心の中で（マスコミ嫌いの偏見も多分にあるのですが）心底思ったものです。暴行を受けた女子大生だって、そのまま男のマンションに上がり込んでいたわけでしょう？　もう自分で責任を持てる年でしょう？　もし本当に集団でそのようなことが行われたのであれば、例えエリート中のエリートである（エリートの定義は100万人に一人の逸材なんだそうです）慶応大学の医学生であっても、一瞬にしてその地位を剥奪されます。それも良いでしょう。トップである医学部長が記者会見で、自らの管理責任が及ばなかったことについて詫びるのも良いでしょう。しかし！　お詫び申し上げるそばから、視聴率やスクープで自分の成績しか考えない低俗な奴らに、世界の権威者（それも自身の努力をひとつひとつ積み上げて今の地位にたどり着いた）が、第3者である立場からボロクソに云われるのは本当に腹立たしく思いました。お前らがそんなにボロクソに云って何の善後策になるんだよ！　「厳重なる処分を考えます。再発防止に努めます。」これ以上大学のトップに出来ることはないではないですか？

　おそらく今度は、千葉大学がこんな学生を篩いにかけられなかったことをマスコミから叩かれるのではないでしょうか？　これを機会に、また医学部入試に関して改革が求められることになるでしょうね。ますます医師の立場が悪くなります。だから医療ミスがどんどん出てくるんだと云う奴が必ず出てきますよね。マスコミの奴らだって、盗みだとか淫行だとかやっているじゃねえか？　そんなとき、マスコミのトップが出てきて記者会見で深々と頭を下げますか？　その時自分の会社のトップにマスコミの下っ端が罵声を浴びせかけますか？　自分の会社の人間の不祥事では、決して大きく取り上げないのがマスコミの常です。医学部の入試に関しては入試システムに改革が行われるでしょうけれど、マスコミの入社試験にはシステムの改革は行われないでしょう。

　まあ、なにさまその千葉医大の学生には、医者になって欲しくないと云うのが万人の考えでしょう。私もそれには賛同せざるを得ません。例えずば抜けた偏差値の頭脳の持ち主でもね。医師免許を申請するときに、賞罰の有無を記載する部分がありました（私もスピード違反は申告しませんでしたけれど）。彼はここもばっくれて空欄で出すつもりだったのでしょうか？　ちょっとそれはねえ？　まあそれだけの頭を持っているのですから、他に幾らでも身を立てる方法はあるはずですよ。医師の倫理観が重要視される昨今、彼が堂々と医者になってしまうとみんなが迷惑を被ります。医者になってから婦女暴行を起こしても、医師免許剥奪になるんですから。我々もハレンチ罪は決して許されませんね。気を付けなければ。電車の中の痴漢行為をでっち上げられることもありますからね。何せ今や医者は世の嫌われ者ですからね。ちょっと被害妄想気味ですか？