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医師の正義感闇カルテルと医療の矛盾


 11月29日の夕刊の第一面に出ていた記事です。医療用レントゲンフィルムを扱う業者4社がカルテルを結んで、レントゲンフィルムの納入価格を不当につり上げていた疑いがあり、公取委が入ったとのことでした。まあ、そんなことはかねてから当然と私は思っていましたが、医療ミスや交通違反のもみ消し、教師のハレンチ罪等々(そう云えば、我が母校××大学の教授がインターネットで自らの猥褻写真をCD に落として販売し、逮捕された記事も数日前に出てしました。馬鹿だなあ、一生を棒にふったね、子供もいるんだろう?)と同じく、今まで当然のことがたまたま表に出てきたと云う印象しかありません。別にレントゲンフィルムだけじゃないぜ、薬なんか全部そうじゃあねえか? 医療に携わる人間がボロクソに云われていますが、医療を取り巻く環境も完全にパラサイトどもによって腐敗しているんですよ。皆さんもよく知っておいて下さいね。
 だけど、この記事でやはり気にくわないことが書いてあるんです。レントゲンフィルムは我々が使用する時は、保険適応と云うことで、請求する際にいくらになるか全部決まっているんですよ。購入価格とその公定価格との差益が医療機関の利益となることを何回も強調して書いています。ものを買うときには少しでも安く買おうとするのは当然だろう? それを嫌われ者である我ら医療機関関係者が、あたかも悪いことをしているような印象を与えるトーンで書いてあることが無性に腹立たしく思います。だったら、公共事業をやっているゼネコンに、セメントや木材の納入価格を提示させろよ! 医療費よりもよっぽど節約できるぜ! つい先日、ある新聞社から、子供を交通事故から守るためのキャンペーンで、看板を出すために寄付をしてくれないかと云う電話がありました。その主旨には異論はないのですが、その新聞社は世の医者を正に己の敵とばかりにまくしたてて書く新聞社でした(敢えて名指しはしないけれど)。そんなことで、電話の主とちょっと話をしました。「何故おたくの記事は、あれだけ我々医者を目の敵にするの? 編集部の奴、ちょっとおかしいんじゃない?」と私が尋ねると、まあ寄付が欲しくて敢えて逆らわなかったのか、私の言い分に相槌を打つような感じでした。結局3~4分そんな話をして、「そう云う訳だから、私があなた方に協力したくなくなるのは理解してくれるよね。」と云うことになり、もし自分に余裕があって、タイミングが合えば個人的に寄付をするよと云って電話を切りました。あの相槌は本音だったのでしょうか?
 さて話をこの闇カルテルに戻します。実は今年の4月の保険改訂の時にレントゲンフィルムの公定価格は僅かながら下がったのです。まあ、削れるところから削ろうと恥も外聞もなくやってくる厚生省や支払い基金のやることではあるし、医師会を始め各医療関連の企業も文句を云うパワーもないからしょうがないと思いつつ、私のところの納入価格が据え置きなら納得しようと思っていたのです。私はやはり品質を考え、シェアで一番多いメーカーの製品を使っていたのですが、「先生、誠にすみませんが.......。」と云いつつ業者の持ってきた見積もりには、なんと一律25%Upの数字が並んでいました。公定価格が僅かながら下がったのにも関わらず、納入価格が1.25倍になる訳です。結果的にこれが違法な闇カルテルで締結された価格なんでしょうね? まあ業者には「なんだよ、これ.......?」と一言だけ云って帰れと云い渡しました。その後の私の決断は早かったです。その納入業者からは現像機も買い、定期的な機械のメンテナンスも任せていましたが、私はそそくさと現像機を入れ替え(メンテナンスを他社にやらせるため)、レントゲンフィルムのメーカーと納入先を替えました。現像機も定価では160万円くらいするものですが、今後レントゲンフィルムの購入と、メンテナンスを任せることを餌に、うんと値切って買いました。これも新聞に云わせると悪いことなんでしょうね? 私は経営努力と思いますけれどね。今や経営努力も怠ると我々は生き残れないんです。100万払っても、レントゲンフィルムの納入価格が下がれば、こっちの方がまだましですよ。でも、ふと考えると、レントゲンフィルムのメーカーを替えたら今までの納入価格に近い値段になると云うことは? そうか!この闇カルテル、あんまり足並みが整っていないな。昔は経営努力なんてこと考える必要がなかったみたいだしね。「俺は医者だ!」と云うだけで銀行が無担保で幾らでも貸してくれた時代があったそうですよ。今はそうは行きません。
 そこで私は思うんです。医者ってのは利益を追求しては行けないと医師法ではっきり明示されているんです。今や情報公開、カルテの開示を始め、医者の業務はガラス張りになってきましたし、患者さんも様々な情報を得て賢くなってきたし、もし利益を優先するような医療をすれば患者さんは来なくなる、つまり悪い医者は陶太される時代になってきたと思います。これは良いことですよ。当然医療ミスがあればそれも業務に響きますしね。だから利益を追求してはいけない我々に、闇カルテルを結んで自分達の利益を必死に確保しようとするような業者が近付いて来ること自体矛盾だと思うんです。先に書きましたけれど、レントゲンフィルムだけではありませんよ。薬なんかも建値制なんて体裁を整えてはいますが、どの卸業者から入れても全く同じ納入価格を提示するなんざ、完全に独禁法違反ですよ。公取委さ~ん!レントゲンフィルムだけじゃないよ。よ~く調べてよ。他にもいっぱいあるんだからあ!我々の廻りでは価格競争なんて殆どないんだから。だからさ、私からの提案!医者だけじゃあなくて、医療を取り巻く業者達にも利益は追求しませんと誓わせなければ! 医師法ではなくて医療法くらいにして、介護保険関連も含めてシステムの再構築をすればいいんだよ。皆さん、見ていてごらんなさい、そう遠くないうちに一般業者がやる介護保険サービスの質の低下が新聞に騒がれるはずです。今や悪いところはひどい状態らしいです。良い業者と悪い業者とに2極分化しているようですよ。そして何回も云っているけどさ、厚生省から製薬会社への天下りを一切禁止して、薬価を欧米並に下げればまだまだ日本の保険診療はあと10年は生き延びられるよ。老人保険の本人負担分も1回530円のままで行けるはずだよ。それなのに汚ねえ奴らを野放しにしておいて、老人保険の本人負担分を定率1割負担? 1回800円? 馬鹿なことを云ってんじゃあねえよ!
 ホント、このままじゃ保険医療はもうじき破綻しますよね。それも我々医者が悪者にされながら。私は今後3~6ヶ月後のレントゲンフィルムの納入価格が楽しみです。これは皆さんにまた報告しますね。”闇カルテル崩壊、その後........”なんてテーマでね。新聞に出ている大手4社に”利益は追求しません”て誓わせたらどう?



 と、ここまでは11月下旬に書いたんです。ところが!12月5日の夕刊の第一面に大見出し、”薬価格、違法下支え、医療用卸組合 値引率制限”と出ていました。医療用医薬品卸の業界団体が、値引率を一定にするよう各社に指示していた疑いがあり、また公取委が独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を始めたと云うものです。ここで私は声を大にして云いたい! 公取委さ~ん!それは違うぜ!いまこのやり玉に上がっている卸業界はそんな甘い汁を吸っていません! 彼等はギリギリの所まで追い込まれているんです。彼等が製薬メーカーから薬を買い入れ、我々医療機関に毎日社員が車で出向き、注文を取っては薬を運び入れる。彼等の利ざやなんて本当に微々たるものなんです。これで公取委が無茶なことを云ったら、この業界は完全に潰れます。彼等は例の建値制以来製薬メーカーからの仕入れ値をぐ~んと高く仕切られ、我々医療機関から値引きをしろと責められ、それはそれは苦しい立場に立たされているんです。一例をお示ししましょう。昭和30年代、40年代、それは薬価差益がたっぷり、卸業者も医者もずいぶん稼げたようです。当時は未だ高価(今でも安くはありませんが)だったカラーテレビや、海外旅行等を薬屋さんが医者にプレゼントしてくれたんです。それでも余りある利益があったんです。それが30年、40年経って、つい最近まで彼等卸業者は決して高価なものではありませんが、我々医療機関に盆暮れでいろいろなつけ届けを持ってきていました。ところがここ1~2年、卸業者の担当者曰く「先生、済みません、もう予算がなくてこんなものしか持って来れないんですよ。」と○○薬品と名の入ったタオルか手ぬぐいだけを持ってくるんですよ。私は「いや~、盆暮れ持ってこないのは良いんだけれど、君らはそこまで苦しいのか?」と。ホント、これは私の本音です。私に云わせれば、今回の公取委のがさ入れは、弱いもの虐め以外のなにものでもありません。かろうじて、苦労して苦労して自分達の喰いっぷちを確保するために努力している人間を踏みにじるものなんです。違うよ! 不当な利益を頬張っているのは製薬メーカーだって! だから欧米の薬の値段を見てみろよ! 日本の1/2、1/3だぜ! 国がマスコミを焚きつけて薬価差がなんだかんだと云っているのは、製薬メーカーに天下りなんかさせて、その既得権を何とか死守しようとする奴らの陰謀なんだから! 我々だって消費税は払って貰えず、みんな被っているんだから。この新聞記事にも出ています。医療機関の差益は2%まで圧縮されたって(正直なところ私のところはもう少しあるけれど)。何処の世界に9800円で仕入れたものを1万円で売る奴がいるかよ! だったら俺らの在庫に税金をかけるなよ。我々も毎年棚卸しをしなければならず、在庫している薬剤は財産と見なされて税金がかかるんです。当院が院外処方に出す直前の在庫薬品の総額が約1000万、1000万の在庫があると見なされて税金がかけられ、それを仕入れるのに980万掛かっている計算です。冗談じゃねえよ!
 この記事を見て本当にガッカリしました。”薬価の甘えにメス、公取委、卸各社に企業努力促す”だって? 卸各社の企業努力はもうとっくに限界に来ていますよ。このメスはやぶ医者のメスだぜ。このメスによって患者は死ぬよ、きっと。だったら製薬メーカーにメスを入れろっての! 公取委も大物相手には大立ち回りは出来ねえってことか? 私は懸念します。今回の騒動で卸業界に勤める若い人が他の業種に流出するのではないかと。現にそんなことを漏らしている人間もいます。そうすると、この業界は立ちゆかなくなり、引いては医療用医薬品の流通にも支障が出てくるはずです。皆さんもよく知っておいてください。保険医療が何故こんなに行き詰まってきたのか? もちろん医療技術が進歩し、医療機器が進歩し、一つ一つの医療行為の単科が高くなってきたことは私も認めます。しかし昭和30年代に5円だったバス代が今や34倍の170円、医療費はそこまで上がっていませんよ。葉書だってそうでしょう? 私が小学生の時5円だったのが今は10倍の50円(だから郵政事業は民営化するべきなんだよ)。だったら初診料は1万数千円になるはずです。今、薬代が高いためにずいぶん保険医療は圧迫されているんです。その薬代が高い分は、医療機関にも、卸業者にも廻ってはいないんです。だから今回の公取委の行動も全く的はずれです。医療費を抑制したいんだったら、薬価そのものにメスを入れるべきなんです。なんでそれが出来ないのかは、前のGrumbleにも書きました。卸業界がクーデターを起こしたって良いと私は思っています。ホントに世の中狂ってるよなあ! 世も末だよ...........。