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医療機関の領収書

 本日の読売新聞の記事です。”広がる請求、進まぬ発行、医療費明細付き領収書””医療機関「忙しい」「発行料必要」”との見出し。つまり我々医療機関の窓口で医療費の明細を記した領収書を受け取ろうとする動きが広がり、1年間に34兆円にも上る医療費の不正請求をチェックし、患者にもコスト意識を持ってもらおうと始まったけれど、発行を拒んだり、発行料を請求したりする医療機関が多くあるとのことです。
 実は以前こんなことがあったんです。医師会の保険講習会の席上、国保連合会のお偉いさんが「マーケットで食品を買ったら、それぞれの品目について明細を記した領収書を発行している。だから医療機関もそうした領収書を発行するのは当然なんだ。」と云う云い方でまず講習会が始まりました。そうしたら途端にある先生が、保険診療は7割、8割、或いは10割が支払基金から支払われるものであり、ましてやその組合や国からお願いされて患者負担分を徴収しているのであって、ものを売る商売とは全然違うんだと声を荒げておっしゃっていました。こもっとも。本来保険診療は政府が日本医師会にお願いをしたことから始まっているんですよね、昭和30年代に。それがいつの間にか力関係が逆転してしまっている訳です。ホントに支払い基金で不正をやっている奴いね~のか? って思っちゃいますよ。

 コスト意識を持たないで安心して医療を受けられるのが健康保健のメリット、まさか財政が苦しいからと云って自分の治療を安く抑えて欲しいと云う人はいないでしょう。コスト意識を持たなきゃいけないのは、血税をジャバジャバ使っている役人の方じゃないですかね。せいぜいコスト意識を持てといのは我々医療機関のみで、なにも患者さんサイドにそんなことを云わなくてもいいんじゃないですか? そのうち、あなたの治療はお金がかかるから諦めて下さいとでも云うつもりでしょうか?

 厚生労働省も云っているように、医療の内容が分かるように領収書発行に努めるようにと我々が求められている段階なんです。私は思います。5年後にはこれは義務化されて全ての医療機関が、規定された領収書を発行するようになっているでしょう。それを今からお前らの義務だなんて突然思い立ったことを押しつけられたって、それはこの先生のようにムッと来るのが当然だと思います。

 新聞にあるように不正をチェックすることが出来るほど、この複雑怪奇な保険システムを充分に理解している素人の人がどれくらい世の中にいるんでしょうか? 私だって全部は理解していません。私以上に良く理解している当院の受付嬢達も分からないことがあり、こんな時はどうすればいいのか? と協会に電話して問い合わせをする有様なんです。仮に慢性疾患外来共同指導料、特定疾患療養指導料、老人慢性疾患外来総合診療料、老人慢性疾患生活指導料、特定疾患療養指導料、継続管理加算などなど、こんなことが明細として書かれていて、理解できる人がどれくらいいるんでしょうか? 特定疾患て何が入るの? 慢性疾患は? 慢性疾患に不整脈は入るんですけれど、心室性期外収縮や心房細動は入らないんですから。こんな明細もらってどうするの? ってのが私の率直な意見です。
 
 実は数年前、今のレセプトソフト(Macintoshで行うLAN対応のレセプトソフトを都内で始めて導入したのは当院のはず)を導入したときに、診療内容を明記した領収書を発行できオプションを付けてもらい、更に当院受付嬢達にこれがそのまま患者さんに渡せないかと聞いたことがあるんです。医療機関を受診する上での患者サイドの不満と云うアンケートの上位に領収書のことが書いてあるのを雑誌で読んで知っていましたから。しかし、この領収書を発行するには患者さんが診察室を出ていった直後に受付で全ての診療行為をコンピューターに入力し、その総計を計算させなきゃいけないわけです。更に当時は院内処方でしたから、処方した薬の薬価も入力しなければならず、前回処方と同じならまだしも、「今日は胃薬は余っているから要りません。」なんて云われた日にゃ大変な事になるわけです。結局受付嬢達からは「先生、それは無理ですよ。」と云われる結果になり、私は諦めたわけです。私は断言します。この領収書発行が上手く進まない一番大きな理由は、如何にして医療費を抑制するかに主眼が置かれた、訳の分からない健康保険システムの複雑さにあると。

 今、レセプトソフトをある組織が統一して1本に絞り込もうとして試作し始めています。これもなんだか胡散臭いけれど、そしたらサンヨーやシャープ、富士通と云ったレセプトソフトを扱っている部門は潰れるね。どうやらこのソフトはLinuxをOSとして動くらしいんだけど、70歳を過ぎた夫婦が二人でやっている医院なんてのはもうやっていけないでしょう。

 被害妄想たる私は、医療費の不正請求チェックだとか、明細が記載されている領収書を発行しているところは33%しかないなんて書かれると、これも医者バッシングの一環かと思っちゃいます。ホントに我々はここまで恨まれているんですかねえ。