医医療改革の中身-2
3)被用者本人の3割自己負担、老人医療費の伸び率管理~社会保険本人の自己負担率を3割に増やすと小泉首相は息巻いていました。しかしこれは500万人の署名運動が効を奏したのか、自民党の日本医師会寄りの族議員が力を発揮したのか、何とかくい止めることが出来ました。必要な時にまた3割に上げると云っていますが、最終的に5割まで持っていくと国は云ってきました。そして小泉さんや福田官房長官が来年の春には3割に上げると云っていますが、これも私の独断で云わせてもらうなら、小泉さんがそんなことは出来ないと考えています。何故なら! 1年の猶予があれば聡明な国民は小泉さんの詭弁にようやく気づき、小泉内閣の支持率が50%を切り、そして自民党の抵抗勢力が小泉内閣をひっくり返し、来年の春には小泉さんが首相の座にいないと考えるからです。そしてもっと福祉のこと、医療のことを本気で考えてくれる人がイニシアチブを取ってくれることを切に望みますが、はたまた更に過激な人が出てくる(誰とは云いませんが想像はつくでしょう?)可能性もあり、余談を許さないところです。かつて社会保険本人の自己負担率は0でした。それが1割になり、1997年7月には2割になり現在に至っています。もうここに国民皆保険制度のダム決壊のヒビが見えてきています。薬剤一部負担金の撤廃と引き合いにして3割に上げると云う手だても見え隠れしていますが、もともと薬剤一部負担金なんてものは政府が苦し紛れに打ち出してきた国民からの二重取りと云われる筋の通らないもの、こんなものと引き替えならやむなしとの愚論も出ていますが、私は話しにならないと考えています。
今回の厚生労働省(一番無駄遣いが多いとの判定を受けた省庁)が医療改革に先立って作り上げた思案の中で最も非難を浴びたのが老人医療費の伸び率管理です。そんなこと無理だって小学生が考えたって分かるだろう!! だったら医学の進歩を止めろよ! って云いたくなります。日本医師会はこれを憲法違反だと突き上げました。日本医師会はこれを最大の粉砕目標として照準を定め、法的強制力のない”指針”と云う玉虫色の答えになりました。私に云わせりゃ、こんなことを云いだした厚生労働省の役人は無期懲役に値すると思います。こんなことがまかり通れば、各医療機関は”高齢者の受診お断り”なんて貼り紙を待合室に貼りかねませんよ。或いは”70歳以上の患者さんは先着30名に限り診療いたします”なんてことになりかねません。でも恐らく老人保険の割合が多い医院の医者が呼び出され、陰に隠れたところでまた”自主返還”なんてことを強制されるのではないでしょうか? 年とりゃ病気は増えるんだよ! 当ったり前のことじゃね~か! 厚生労働省は2002年度から大学病院等を対象に予算を組んで医療費の管理を行うような試験を試みるとしています。老人は大学病院へは行かない方が良いかも知れませんね。あ~、恐ろしや......。
4)薬価1.3%、材料0.1%の引き下げ
大手医薬品メーカーが開発してきた薬が2年を経過すると、その模造品を作ることが許可になります。すると皆さんがあまり聞いたことのないメーカーが作る薬で、名前も違うけれど中身は同じと云う薬が処方されることがあります。私個人的なことですが、ブランド志向の私はこのジェネリックと呼ばれる一群の薬があまり好きではありません。自分の処に来てくれる患者さんにまがい物を出すような気分になってしまうのです。私が父から継承したときに少し時間はかかりましたが、このいわゆるゾロ品ものを院内から一掃しました。もともとはこれらの薬は大手医薬品メーカーが作る薬と薬価は同じで仕入れ値はグンと安かったんです。その代わり、一度に購入する量が数万錠と云う膨大な量でした。確かに仕入れ値が安いので、薬価差益に経営のよりどころを持っていた10年前はこれを使えば楽でした。でもそんな気持ちから私は敢えて苦しむ方向を選びました。今や私は薬局を外に出し、院外処方としていますので薬価差益は関係なし。処方箋にこのようなゾロ品を書くことは皆無です。確かにこのようなジェネリックメーカーの中にも、革新的な除放(薬がゆっくりと溶けて身体に吸収されていくこと)技術を持っているところもあるようですが、中にはPTPのヒートの中にハエが入っていたなんてひどい話も聞いています。しかし、今やこれらゾロ品は薬価が下がり先発品と差が出てきたため、国はこんな薬を積極的に我々に使わせて医療費抑制に一役買わせようとしています。いずれ我々は処方箋に製品名ではなく薬剤名を書き入れ、先発品を使うか後発品を使うかはその処方箋が持ち込まれた薬局が決めることになると思います。それはそれで新しい趨勢と考え、私がとやかく云う筋合いのものではなくなると思いますが、このホームページを作り上げた当初から吠えているように、日本の薬価はメチャ高いんです。旧厚生省から製薬メーカーに天下った奴らが好きなことをしてきたために、欧米とは比較にならないくらい高い薬を税金たる保険料で買い入れ、自らの医療費を圧迫して苦しめてきました。しかし、今やそんな儲けているはずの大手製薬メーカーも体力を失い、銀行と同じく国内の会社同士で合併したり、外資系の会社に吸収されたりしながら、今の日本の銀行以上に再編を進めてきました。しかしそれでも不況のどん底にあるこの社会情勢の中では新薬を開発するだけの余裕もなく(もともと治験など新薬を開発する土壌に日本は恵まれていない)、これらのメーカーを守るために薬価がたったの1.3%しか下げることができないと云うのが現状なのです。なおかつ品質が安定している等の理由からジェネリック市場は日本では伸び悩み、国の思惑が進まないと云う状況に陥っています。しかし未だ医薬分業率は全国で4割にしか達しておらず(医院や診療所の近くに薬局があるとは限らない)、まだまだこれから分業は進むはずですし(国の政策として薬剤師の収入確保と云う面も充分にあった)、我々も今や薬価差益に頼るような医療経営では立ちゆかなくなることを充分認識しています。材料費は0.1%の減少に留まりましたが、やはり諸外国に比べて日本での保険償還価格がまだまだ高いのは、検討の余地があると思います。
今回の話は専ら私自身が関わる診療所、医院の部分だけを主に書きましたが、一方で多くのベッドを抱える病院における医療改正も進んでいきます。もっとも全国民医療費のうち、私のところのような小さな診療所、医院が受け取る診療報酬と云うのは25%に過ぎないのですが、一方で大学病院のような大きな施設でも経営状況は青息吐息、私は今年の4月を境に医療経営、特に廃院も含めた医療現場の大きな動きがあると感じています。もちろん私もうかうかしてはいられません。やはり生き残るべく努力をしなければならないと思っています。しかし、国が受診抑制をも辞さないような無茶苦茶な政策を掲げて迫ってくる上に、一番の当事者である患者さん達がそれほど関心を持っていないことに大きな懸念を感じます。残念ながら、この末期的な医療財政の下ではこうすれば打開できると云う策は到底思いつきませんが、バブルに踊ったつけ(その象徴がバブルタワーと呼ばれる都庁だと思っています)が患者さんの命と引き替えにされることを本当に悲しい想いで見つめています。皆さんもどうか自分自身のことと捕らえて考えていただきたいと思います。命より大事なものってありますか???