先生の勘違いじゃないですか?
最近は診療所の備品が結構老朽化してきました。院内でLANを組んでいますが、そのネットワーク内のパソコン、プリンター、監視用ビデオカメラ、内線電話、レントゲン撮影装置などなど。私が頻繁に使う内視鏡カメラはもう開業して3台目、超音波断層撮影装置(エコー)も3台目、パソコンなんざ20数台とっかえひっかえです。やはり高いものはリースで、全額経費で落とせる上に大体5年のリース期間が終了するともう1度くらい再リースをしてこちらに譲ってくれると云うパターンが多く、特に定価では1千万くらいする内視鏡なんかはリース期間内にpayできるかどうか分からず(ランニングコストを考えると当院如きの件数では5年ではpay出来ない)、購入時にはずいぶん頭を悩ませます。そしてレントゲン、これこそ未だ保守契約を結んで大事に大事に使っていますが、1千万、2千万する機械を新たに新調したのではその機械が現存する間にpay出来ない、しかしこれがなければ商売にならないと云う悪循環に陥っています。ましてやもう当院のレントゲン装置は管球(レントゲンの線源)がいつ寿命が来てもおかしくないくらい使い込んでいます。管球の寿命は何の予告もなく突然やってくる。ある日レントゲンが撮れないと云う日が突然やってくる、そんな恐怖に怯えていると云って良い状態で何とかやっています。確かに現在でも綺麗な写真は撮れているので、それを古いからと買い換えるのも現在の収支を考えれば到底踏み切れません。親しい脳外科の先生が嘆いていました。この先生のところにはCTスキャンがあります。突然CTの管球の寿命が来たそうです。「Tak先生! 聞いてよ!! 何の予告もなく突然300万の出費が出て行くんだよ!」 もう本当にご愁傷様と云うしかありません。
私も開業して17年、経営学もずいぶん勉強しました。しかし最近、特に医療費抑制が叫ばれて段々当院の収支も苦しくなってきているところ、勉強したとは云ってもまだまだ私は未熟であることがしみじみと分かってきました。仲の良い同業と話をすると、まだまだ節税、経費を増やして所得を減らせる余地が多々あることが分かります。但し節税と脱税は紙一重、こちらが良しと思ってやったことに対し、税務署の担当官の胸先三寸でいくらでもいちゃもんがつけられるようです。幸いにしてここ15年、税務署が来たことがありませんが、「そんな申告をしていれば税務署なんか来るわけないよ!」と云われてしまうまで私は公明正大な申告をしてきました。もういい加減、首が締まってきて身動き出来ないと云うのが本当に正直な現状です。
しかし、そんな苦しい中でも新たに購入しなければいけないものもそろそろリストアップしてきています。やはり買う事は出来ないので、リースが選択肢になります。そこでこのGrumbleの本題、そのリースについてのトラブルをお話ししたく思います。
だいたい医療機器の償却期間は5年、だから今ではリースは5年で組むことが多くなります。通常リース期間が終了するともう1回再リースを申し込んで終了、その後は再々リースをしなくてもリース物件を譲り受けることが殆どです。古くなったリースの物件、ましてやでかい医療機器なんかをリース会社が引き取ったって処分に困るだけですから。償却期間を過ぎた医療機械なんざ使う処はないし。そんなことでリースを申し込むときに、再リースを1回したらもうその機械はくれると云う約束の元で契約を結ぶように知恵がつきました。しかし、その内容は契約書の書面にすることはどうやら出来ないようです。法律的に問題があるようで、業者は書面にすることだけは勘弁して下さいと云います。だから口約束、時には名刺の裏にその旨書いてくれる業者がもいましたが、結局間に入った取引業者などが証人になって最近はトラブルはありません。もっともそんな交渉方法を知らない、リースが何かもよく分からない開業したての頃は業者に良いようにやられました。5年のリース期間が過ぎて1年ごとに1ヶ月分の請求書が来て、結局再々々々々リースまでしました。つまり10年目まで私はリース料を払い続けました。本当はそんな約束をしないでも、再リースに際して「これで終わりにしてくれよ。」と云えば、大体のリース会社は今後のつき合いも考えて降りてくれるものなのです。そんな知恵がつくまでずいぶん時間がかかりました。この10年リースも腹が立ちますが.......。
実はリースで購入したカラーコピー機、ずいぶん値切って安くはしてくれましたが、本体とMacintoshと繋げるインターフェイス、この後者の方が高いのですが、総額数百万に昇る機械のリース期間が切れ、再々リースの請求書が来ました。実は当初リース契約を結んだ大手リース会社が倒産し(そう云えば詳しい人は何処だかは分かりますね。)、債権はそれを引き継いだ外資系のリース会社に渡っていました。こちらとしては今まで通り毎月決まった額が通帳から落ちるだけ、何も手続きすることなく、そのまま再リースが切れる期間が来ただけのことでした。もちろんその倒産したリース会社とも口約束をしていました。再々リースの請求書が来たとき、こちらから電話をかけてその旨話しました。その時に対応したのが25歳の女、25歳と云うのは後で分かったことなのですが、その対応たるや酷いものでした。「そんな約束をする訳がありません。」 「先生の勘違いではないのですか?」 「先生がそれだけリースについての知識をお持ちなら、その物件の所有権は当社にあることは当然ご理解いただけますね?」 オウオウ、云いたいこと云ってくれるじゃねぇか? まぁ償却している古い機械のこと、こちらは結構腹が立ちながらも善後策を模索すると云うスタンスで話をしました。それにしても客を客とも思わないその態度、おめ~の勘違いじゃねぇか? なんて態度は許しがたい、俺が嘘つきだって云うのか? とも考えましたが、結局追い金3万円弱を払って再々リースを以て契約終了と云うことになりました。私に云わせれば「馬鹿だなぁ、お前。これで新しい契約を逃したぜ、もう二度とてめぇのところとはリース契約しないぜ。」と考えていました。そして何となく面白くない思いをしながらもこの件は終了したかに思えました。ところが............。
超音波断層撮影装置がいよいよ古くなって新規購入を考えました。当院出入りの卸し業者で、特に私の担当者は普段から一生懸命やってくれる男、個人的にも私の奢りで(本来はその会社が接待してくれるはずなのですが)飲みに行ったり、遊びに行ったり、時に釣りに行ったりする仲で、私が彼を通して超音波断層撮影装置を買えば当然彼の成績にもなる、そんな思いも持っていました。また彼の連れてきたその医療機器メーカーの担当者(女性)もよくやってくれる人で、私の「エコーの画像をMO Diskに取り込んで画像のデータベースに入れたい。」と云う希望にもすぐに対応してくれました。もう一方で天秤にかけた機械がありましたが、入札の段階でDrop out、結局その彼と彼女の薦める、しかも画像は非常に優れていると云う機械の契約に至りました。しかし、前回カラーコピー機のリースの件で不愉快な思いをした会社と同じ系列傘下の米国メーカー(そう云うとこれも何処か分かってしまいますね)、リースに関してはここは使うなよと卸の彼に充分に云っておいたはずなのです。ところが! いざリース契約の段になって私のところに現れたのはそのリース会社の営業マン、おい、ここは使うなって最初に云っておいただろう? こう云う私の言葉を聞いて自分のドジに気付いた優秀な彼は何とも困った顔をしていました。しかし話を進めるうちに強引にここと契約してくれと云う雰囲気になってきました。何せ同傘下のグループですから。その強引な態度にも気に喰わないところ、その経緯(いきさつ)を担当者に話し、結局怒った私は「お前みたいな下っ端じゃ話にならねぇ! 上司を連れてこい!」と云うことになりました。そして後日、超音波断層撮影装置の会社の部長、担当の彼女、リース会社の部長と担当者、そして卸しの彼、5人の業者を並べて結局私が怒鳴りまくる修羅場となってしまいました。その時に私に対して非礼な言動をしたリース会社の電話の相手が25歳だと云うことを聞きました。今でも名前を憶えています。とにかくここ数年の間、あれほど私が怒ったことも珍しいと云うくらい熱くなりました。怒鳴り飛ばす私の前で一生懸命やってくれたメーカー担当者の彼女は眼を真っ赤にして泣いていました。結局機械の購入そのものが白紙になりそうでしたが、リース会社は引っ込み、医療機器メーカーからは新たな譲歩案が出され、他のリース会社と契約して購入に至りました。ただ、そのリース会社の部長に一目置いたのは「あの機械は素晴らしい機械です。当社を使わなくても結構ですから是非ともご購入下さい。」と云って帰ったのと、商売相手を怒らした下っ端の部下を彼があくまでもかばったことです。私も当院のスタッフにクレームをつける患者に対して自分のスタッフをかばいます。もちろん後でそのスタッフを怒りますが。私の望み通り私を怒らした相手が部長からお叱りを受けたのは定かではありません。しかし、目先のことばかりに目がくらんで、先を見なかった無能なOLは会社に入るかなりの利益を失わせたことになります。それから私はまだまだ医療器械をリースで買っていますし、これからもたくさん買うわけですから。たかだか3万円足らずをケチって数百万、イヤ数千万の売り上げを棒に振っているわけです。