医学の進歩雑感
皆さんも御周知のように近年の医学の進歩には目を見はるものがあります。かつて労咳とは死を意味する病名だったものが、治療により多くの人が救われるようになり、天然痘は撲滅宣言にまで至りました。今や遺伝子治療がものすごい速度で進歩し、しまいには、自分と同じ人間(の形をしたモノ)を作り、それから必要な肝臓や心臓や、はたまた脳の一部までおおもとの壊れた部分と取り替えるような時代が来るのではないでしょうか? イラクのフセイン大統領が、自分のクローンを作り出そうとして模索していたことが記事に出ていたことがあります。恐ろしいことですねえ。遺伝子の構造は、子供に教えることが出来るくらい簡単なものであることが分かったことが、これを応用する実験や治療に加速度を与えました。でも私の大学受験の浪人中に予備校のある講師の先生がおっしゃっていました。「人間、どんなに進歩しても脳ミソをいじっちゃいかん!」と。確かにその通りだと思います。だいぶご高齢の先生でしたが、今ご存命なら、この先生は今の医学の進歩をどの様にご覧になっているのでしょうか? お嘆きのことと思います。このように、科学の分野(科学に限りませんが)で競争が激しくなると、必ずフライングする人が出てきます。つい最近でも某農学部系大学で人の倫理に関わるような実験を倫理委員会にかけずにスタートさせ、マスコミに叩かれていましたね。
臓器移植もいよいよ本格的にスタートしてきました。確かに脳死については意見の分かれることと思います。なかなか難しい問題です。脳死移植の第一号は、もうマスコミにモミクチャにされ、患者さんのプライバシーなんてあったもんじゃありませんでした。でも、臓器提供に賛同してくれた患者さんご本人、ご家族の方には私も最大限の敬意を表します。医学的、技術的準備は充分整っていたはずです。もう各大学ではアメリカやフランスへ留学して多くの経験をし、状況さえ許せばいつでも臓器移植は可能な状態でした。しかし社会的な準備が充分整っていたとは云えないと思います。ときどき電柱にチラシが貼ってありますね。東南アジアの方でいくらいくらで腎移植ができるとか、更に酷くなると、それをネタにした詐欺事件まで起きています。弱い立場にいる人から、その弱みにつけ込んで金儲けを企む極悪人には厳罰をもって対処すべきだと思います。ある評論家が、日本人には倫理観が欠けているから臓器移植は無理だと話している人がいました。当たらずとも遠からずでしょうか。今更のようにその人の言葉を思い出しています.........。