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現場の悲劇


 介護保険はその後うまく行っているのでしょうか? 様々なトラブル、不満、悲鳴が聞こえてきますね。新聞や雑誌でもこの内容をテーマにして記事がたくさん書かれています。現場を知らない、見ていない官僚達が作っていくシステムの中で、その中にいる人間だけが途方に暮れるのは、今の日本の現況では決して珍しいことではありません。
 まず深刻なのはヘルパーの数の不足。介護保険実施当時、これはビジネスチャンスと国に騙されて参入してきた大手2社が早くも事業規模を縮小、しかし前にも進めず、後ろにも引けず暗礁にに乗り上げているようです。講習を受けて資格を取得した人達も、全然話が違うと云うことで撤退し始める始末。当然、介護保険でサービスを受ける側の不満もたくさん吹き出てきています。正に現場からの悲鳴が聞こえてきます。確かにこれだけの大事業をするのに、思い立ってから実施するまでの時間が短すぎたような気がします。むしろ、介護保険の保険料を徴収することばかり考えてきたしっぺ返しが来ているように思えてなりません。
 先日私は当院に通院している患者さんを叱りました。その患者さんの意見書を書くように市から書類が届いていたので、その患者さんが当院へ来院された時に、今の生活で何が困っていて、何をヘルパーさんにしてもらいたいかを尋ねました。もともと認知症も殆どなく、当院へは規則正しく一人で通院できるほどしっかりしているおばあちゃんなのですが。介護度も決して高いスコアではありません。医師:「○○さん、今何に困っていますか? 意見書に○○さんの要望を盛り込みたいと思いますので、具体的にお話ししていただけますか?」、患者:「そうですねえ、今は水廻りの掃除と、庭の草むしりをしてもらいたいと思います。」医師:「..............。」 結局この人に限らず、介護保険におけるヘルパーの仕事を、家政婦、よろず承りと勘違いしている人がものすごく多いんです。とどのつまり、介護保険で何をやるかの啓蒙が出来てないからこんなことになるんです。小さな一医療機関でさえこんな状態ですから、ヘルパーさんが働く現場では推して知るべしです。巷ではヘルパーの質が悪い、だから業者を替えてもらったなんて話がしょっちゅう聞こえてきます。もちろん現在では数を整えることを優先にものごとが進んでいますから、当然質の悪いヘルパーも中にはいるでしょう。しかし、この事例のように、頼む側の質の悪さも決して見過ごすことは出来ない状態だと思います。
 そもそも以前書きましたように、介護保険とは医者を虐めるために出来上がってきたもの? このシステムの創案者が今や量刑が重すぎると泣きを云っている始末、もうここまで来てしまったら後戻りも難しいのではないかと思います。なんかこのままこのサービスは消滅してしまいそうな雰囲気。いっそのこと公共事業みたいに見直して白紙に戻してみる? それなら私は喜んで無償貸与のコンピューターをお返ししますよ。まずやるべきことは、利用する側に介護保険で何が出来るのかをしっかり具体的に国が示すこと(具体的に何百でもサービス内容を箇条書きにして、希望するものに○をするようなシステムでも良いと思います)、そして業者の側には医師法と同じくボランティア精神を持って人に尽くすと云う考え方を徹底させること、ビジネスチャンスなんて言葉を使っているうちは絶対にこのシステムは動きませんよ。だってそれだけの予算がないんだから。まず基本的なところをしっかり煮詰めて、広く関与する人達に啓蒙することが第一だと思います。そして本当に良い方向に動き始め、その気のない悪い業者が撤退したところで少しずつ保険点数を上げて行けば良いんではないでしょうか? その時には当然我々の保険料負担も少しずつ増加するでしょう。でも本当に良い介護保険が実施されるなら、負担増に対して私は文句を云いませんよ。