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患者さんからの苦情


 以前から私がこのホームページで書いているように、”患者を診てやる”なんて医療の時代は終焉を迎えました。私のところでも如何に患者さんに対してきめ細かなサービスが出来るか、自分の患者さんに対する説明、態度はもちろんのこと、設備の充実、従業員の教育などについて諸々の努力をしてきたつもりではあります。しかし、未だ目の届かないこともないとは云えない.......、悩むところです。そんな中で医業経営者向きの雑誌があり、様々な情報を提供してくれ、興味を持って毎号読んでいます。その雑誌の記事の中に”医療機関にこれだけは言っておきたい!” と云う特集があり、私なりにごもっとも、或いはそうかなあ? と云うコメントを加えてみました。生の声として重く受け止めていますが(誰かの台詞と一緒?)。

☆たった15分の診療のために半日無駄になってしまう。

 やはり待ち時間に対するクレームが一番多いようです。半日無駄になると云うことは恐らく大学病院や国公立の大病院? やはりそれだけの大きな病院にかからなければならないような病気であれば、2週間、1ヶ月に一度くらい我慢してくださいよと云うのが私の本音。一人15分、つまり午前中の3時間で12名? 私のところでこのペースであれば、私のクリニックは半年持ちません。廃業です。むしろ15分も診療をしてくれる病院であれば、半日潰してでも行って下さいよ。その先生は良い先生ですよ。”3時間待ちの3分診療”とよく云われましたが、一時期に比べれば各医療機関も人員配置の改善、一般開業医への患者紹介(いわゆる逆紹介)、予約制の導入等で努力をしてきました。前にも書きましたが、私だって患者さんとゆっくり話したいんですけれどね。

☆銀行のように日や時間帯による予想混雑状況を掲示してくれると、次回の参考になる。

 これ、私一度失敗があるんですよ。何故か当時私の診療所は割と火曜日が空いていたんです。だからあまり仕事に時間を縛られない老人保険の患者さんなどに「火曜日が空いているから火曜日に来て。」って話したんです。いつの間にか火曜日が混むようになって、「先生!話が違うじゃない!」ってなことになってしまいました。これって口コミのせい? それから朝一番と午前午後の診療終了間際が混むんです。中だるみ状態。診療時間の真ん中は割と暇で、患者さんが途切れることもあるくらいなのに、診療は定時に終わらない、こんなことになってしまうんです。駆け込み受診はおやめ下さいって云おうかな?

☆軽い病気ならインターネットでもアドバイスがもらえると便利。

 これ、私やっているんですけれどねえ、実は結構怖いんですよ。患者さんを診察しないで結論を出すと云うのは非常に危険なんです。だから私のOnline相談室のトップページでも、あくまで参考意見として聞いてくださいねと断りを入れています。実際に全ての疾患の約7割は問診によってだいたいの診断はつくと云われてはいるのですが、勿論胃癌が問診だけで診断できるわけではなし、やはり我々にとって一番恐ろしいのが見逃し、やはりそれに付随して様々な検査(勿論血圧を測る、聴診、触診をする等のベッドサイドでの診察も含めて)をして初めて治療方針が決まるわけですから。だからOnline相談室でも放っておいて良いよなんて滅多なことでは云えませんよね。軽い病気と云うのはやはり診察してみないと分かりませんものね。

☆子供の症状を説明しようとしたら「この子に聞いているんだ!」と怒鳴られた。

 まあ怒鳴る必要はないと思いますが、私のホームページのGrumble No.9”子供のしつけ(2)”でも書きましたように、なるべく小さい子本人から聞き出そうとすることが良くあります。勿論子供の病状申告では不充分なことが殆どですから、その後に親からの話も聞くつもりではありますが、大袈裟に云えば子供の成長に寄与したいと云うこちらの気持ちを全然理解してくれないママもいらっしゃることは確かですよ。

☆ぞんざいな口のきき方で、どんなに医療技術に長けていても絶対かかりたくない医師が多い。人に施しを与えてやるという態度の医師は、人間性を疑いたくなる。

 医師が人間性を疑われるのはちょっと困りものではありますね。でも人間性を疑われるてしまう医師が存在するのも確かなんですよね。ようやく少し前進してきたような印象を受けますが、実際に今までの医学部入学試験、特に国立大学では筆記試験だけ、その人の人間性などはチェックされないんですよ。偏差値の高い人が医師になってきたのは紛れもない事実です。前にホームページにも書きましたが、現在でも婦女暴行で退学になった学生が、名門の国立大学医学部に素通りで合格してしまうんです。でも別に施しを与えてやると云う態度をとるのは医師だけではないですよね。多いのかも知れないけれど。私はコンピューター屋さんにも、車屋さんにも施しを与えていただいたことがありますよ。だからそんなところは二度と利用しません。車屋を替えるより、医者を替える方が簡単じゃない?

☆態度が偉そうで、キチンとした説明をしてくれる医師が少ない。患者が痛がっているのに、治る、治らないの説明もない。

 説明すると一言で云ってもなかなか難しいですね。何処まで詳しく話すべきか、何処で専門的な説明を打ち切るか? その患者さんの理解できるレベルを探します。前話したように肝臓病の患者さんと云うのはよく勉強していますね。パーキンソン病のようなやや特殊な病気だと、患者さん同志で友の会みたいなものを作って、専門医を呼んで講義を聞いたり、意見交換会を開いて情報を収集したりして、なかなか私も舌を巻いてしまう知識の持ち主がいらっしゃいます。キチンとした説明、限られた時間の中で全ての患者さんに充分な理解をしてもらう、非常に困難なことです。

☆風邪気味だったので病院に行くと、少し話をしただけで診察が終わってしまった。自分の身体の状態が把握できないし。キチンと診てくれているのか心配になる。

 ”最近の若い医者はすぐに検査をやりたがる”と良く云われました。確かに問診に始まって、聴診、打診、触診等、理学的な所見を集めるのは大事なことです。確かに風邪であるならば、症状の話を聞いただけで処方薬を決めてしまうことは出来るかも知れません。でも! それだけでは必ずどこかで見落としが出てくるはずです。では、風邪の患者さんにその他聴診、打診、触診を充分すればその見落としは防げる? いいえ、それでも出てくるでしょう。だから数日おいてまた経過を追うと云うことが大事なんです。2週間毎に胃薬や血圧、心臓の薬がなくなって来院され、そのたびに前の風邪がちっとも治らないとおっしゃる患者さんには私も文句を云います。風邪薬はだいたい3日分から長くても5日分、「治ってなかったら来てくださいよ。」本音は10日間も何も治療せずにほったらかしにしている程度の風邪は大したことがないと考えます。逆にもう「何ともないんですけれど、心配なもんで先生に診てもらうおうと思って。」なんて云って来てくれる患者さんには、やはり充分な診察をして、「もう大丈夫でしょう、ひき直さないようにね。」と云って別れます。

☆病状を説明すると「40度の熱が続いても死にませんから」と云われ腹が立った。

 ???、40度の熱が続くと死ぬこともありますよ。生理学的には42度の熱は水に沈めても下げなきゃいけないんです。42度を超えると身体の蛋白質が融解、つまり壊れ始めるんです。人間を構成する基本部分が破壊されていくので、これは是が非でも下げなきゃいけないんですが、40度でも続けば特に脳の組織が壊れないか心配ですね。私は自分の患者さんで41.3度まで経験がありますが、さすがにこの時は焦りました。まあ注射薬を使って下げましたけれど。でも他の病気で「死にはしないよ。」って言葉は何回か使ったことがありますけれどね。

☆点滴の際、針を血管にうまく刺せない看護婦から、「こんな患者はじめて~」と、露骨にこちらの責任であるかのような顔で文句を云われ、頭に来た。

 これも辛いんですよね。なかなか入らない人、血管が細くて入れにくい人、更に血管がない人、研修医時代には泣かされました。大体2回目、3回目まではこちらが「ごめんなさいねえ。」って謝りながら、頭の中でも申し訳ないなあと思うものです。ところが! 5回目、6回目になるともう「こっちのせいじゃねえ!」と心の中で開き直るんです。大体5回を過ぎると何回刺したか数えるようになります。そうなると患者さんの方が、「刺しにくい血管ですみませんねえ。」って云ってくれるんです。そうなるとこちらの罪の意識は段々薄れてきます。私は23回目にやっと入ったと云う経験があります。何回かやってダメな時は少し時間を開けるとか、刺し手が変わるとかした方が良いんですけれどね。「こんな患者はじめて~」と云うのはいかにも今風の若いナースの言いぐさではないですか?

☆胃のX線写真を撮った際、身体の調子が悪くて動作が鈍かったせいか、操作室の若い職員からマイクを通して「この馬鹿、何をぐずぐずしているのか」と叱られた。

 これはひどいよね。確かに動作が遅い人はいるんですけれど、私はジッと待ちます。イライラしながらもね。遅いと云って文句を云ったことはありませんよ。でも確かに遅い人っているんですよね。それで今度は待ち時間が長くなってまた他の患者さんから責められる訳ですから。じゃあ、私、どうすれば良いの?

☆待合室で暇そうに大きな声でしゃべっていた事務の女性達に「あとどれくらい待ちますか」と尋ねると、とても面倒くさそうに答えた。非常に腹が立った。

 これは医療機関に限ったことではないでしょう。ダメな受付は他の会社でもお店でもよくありますよ。ただそれは責任者がキチッと教育をしているかいないかの違いです。その点、当院は厳しいですよ。態度悪い奴は結構私が怒るから、自然に辞めていきます。私はそれで良いと思っています。

☆つわりがひどくてソファに上半身を横たえていた時、医師や看護婦が何人も横を通ったのに、誰一人として声をかけてくれなかったのはショックだった。

 これはちょっと痛いところを突かれましたねえ。確かに大きな病院では、つい自分の患者さんだけに目が行ってしまいます。もし入院中に自分が受け持った患者さんで、退院後外来で苦しそうにしていたら、やはり声をかけるでしょうね。でも大きな病院では重症で運ばれてくる患者さんが多いので、我々医師の感覚が少し麻痺してると云われてしまえば返す言葉がなくなるような心境です。

☆診療費の明細を教えて欲しい。明細の内訳がわかりにくい。同じ診療内容でも医療機関によって異なるのはなぜか知りたい。

 これねえ、私も引っかかっているんですよ。明示したいんですが、とっても一言で説明できるようなしろものじゃないんですよ。”明細の内訳がわかりにくい”のは当然です。まず! 国に文句を云って欲しいです。これについても私のホームページで書いたことがありますが、医療費はどのように決まるか? これは密室で、”如何に保険診療報酬を安く抑えられるか? それも我々医療機関側の批判をかわしながら” が一番の目標に立てられるからです。だから本当に複雑怪奇、慢性疾患で月に3回医療機関の外来を受診すると、1回目は(再診料)+(慢性疾患指導料)+(継続管理加算)、2回目は(再診料)+(慢性疾患指導料)、3回目は(再診料)のみ、1回目、2回目、3回目で本人負担の支払額がみんな違うからなんです。(慢性疾患指導料)は月2回、(継続管理加算)は月1回だけ、(慢性疾患指導料)はかつては月1回だけだったんですが、ある年突然半分ずつ2回になったんです。何故? とりあえず2回患者さんが受診して2回払ってもらえば金額は同じだろう? と云うのが我々医療機関の批判をかわす口実です。ところがもし患者さんがサボってその月1回しか来なかったら? 支払基金は半分それを払わなくて済むわけです。翌月3回来ても2回分しかもらえないんです。1回より2回の方が患者さんも医療機関も面倒くさいに決まっています。でもそんなのは支払基金にとって関係ありません。半分払わないで良い方がいいに決まっています。ましてや(慢性疾患指導料)は初診から1ヶ月以上経過しないと算定できません。前回(慢性疾患指導料)を払わなくて安く済んだのに、1ヶ月以上経って(慢性疾患指導料)が加算されれば、同じ診療、同じ薬を貰っていきなり支払いが増える訳です。これじゃあ説明しなきゃ患者さんは納得しませんよね。でもこれ全部事細かに説明していたら? 受付はパニックです。親方はお前らが良く説明しろと我々医療機関に云います。冗談じゃあね~よ........。

 ”同じ診療内容でも医療機関によって異なる”のは本当なんです。大きな病院は入院や重症患者をメインに、私のところのような小さなクリニックは軽症の患者さんをメインに、しっかり振り分けろって国から云われているんです。だから紹介状なしにいきなり大学病院に行くと、ごっそり取られるんです。これは私に云わせれば、このシステムを知らない人に対する罰金と同じ性格のものだと思っています。まあ、大学病院に風邪で来られても、実際にはちょっと困るんですけれどねえ。

☆家族の入院費を精算したとき、費用明細が示されなかった。説明もなくすっきりしない。

 これは請求してくれればちゃんと明示してくれるはずです。ただ上の項目で説明しましたように、ホントに保険診療の医療費って複雑なんです。入院の医療費ともなれば、点滴1本、点滴のチューブ代(実際にはおおまかにまとめてはあるのですが)に至るまで、全てにお金がかかっている訳です。ホテルでもらう明細書のように簡単にはいきません。しかし、明細書をよこせ、説明しろと云われると云うことは、やはり我々医療機関が信頼されていないと云う証拠なんでしょうね。まあ実際にそんなところでズルをしている所はごく一部なんでしょうけれど。保険の不正請求と云うのは、我々にとって罪が重く、非常に厳しいペナルティが待っています。最近でも2件ほど新聞沙汰になりましたが、保険停止ともなれば、間違いなくその医療機関は潰れます。やはり信頼回復が一番でしょうか?

 皆さん、いろいろストレスがあるようです。まあ生の声と云うことで重く受け止めてはいますが。私自身はなるべくそんな思いを自分のところに来てくれる患者さんに味わわせたくないと考えているんですが、一つお願い! やはり患者さんの側もある程度の勉強はして、少しこんなシステムがあるからしょうがないんだと云う事をわかって欲しいです。でないと、じゃあ保険診療はや~めた! ってなことになり、アメリカみたいに個人が払う医療費が馬鹿高くなってしまいますよ。ちなみに盲腸で1週間入院したら100万円はかかりますよ。我々医療機関だってその100万のうち半分近く税金に持って行かれちゃうんだから。美容形成などで非常に高価な医療費を請求するのは、税金が高いこと、投資に非常にお金がかかっていること、訴訟に対するリスクがあることなど、様々な理由が複雑に絡まっているからなんです。だから私なんざ美容外科と云うものに興味はありますが、自ら身を投じようとは思いません。同級生にも有名な形成外科医がいますが、きっといろいろ苦労しているんだろうなあと思っています。やはり患者さんに誠心誠意尽くす、これに勝るものはないのではないでしょうか?