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一人勝ち

 11月某日、新聞の第一面、経済面にトヨタ自動車の中間決算の記事が出ており、興味を持って読みました。まあ、日産自動車もフランスから社長を引き入れてだいぶ立ち直った折、むしろトヨタ自動車が一人勝ちの様相であることに些かの驚きと、どのような手段を使いこの不況の中そこまで成功したのかと云う理由に興味を引かれました。
 トヨタ自動車の発表した9月の中間連結決算は売上高が前年同期比6.4%増、経常利益が33.7%、税引き後利益が82.4%増、上半期の全世界での販売台数が1.4%増、それぞれ6兆8000億円、5260億円、2910億円、269万2千台と出ています。この絶対値がすごい数なのかどうかは私は全く分かりませんが、なにさまこの不況のおり、これだけ業績を伸ばしたと云う結果に驚くばかりです。更に注目すべきは売上高が6.4%しか伸びていない(この時期に延びるだけでもすごいと思いますが)のに、経常利益、税引き後利益がそれぞれ33.7%と82.4%、如何にコスト削減を一生懸命実践してきたか? 特に税引き後利益が80%以上と、倍近い伸びを示しているのに驚かざるを得ません。そして更に! 人員削減は行っていないと云うのですから驚愕です。収支トントンでアップアップしている私にとって何か学び取るものがあるのではないかと記事を読み返しました。
 まずこの不況の中、車の販売台数が連結子会社のダイハツを含めて1.4%増(この数字は決してすごいとは思いませんが)、過去最高を記録したことになっています。やはり今やこの狭い日本にとっても自動車は必需品、小型車が好評だったことが大きな要因になっているようです。更に良いことに為替相場が円安で推移したこと、恐らく輸出が好調だったのだと考えますが、それが部品調達や生産工程の見直しなどの企業努力から出た利益を上まわる数字であることが逆に恐ろしく感じます。たまたまこれがトヨタにとって良い方向に作用したから良いものの、為替とは生き物、或いは化け物? 場合によっては為替が牙を剥いて我々に襲いかかってくることだってあるでしょうね。円高で輸出が伸びずに倒産した会社も過去に多くあったはず、為替にも充分に気を配らなければいけない会社経営には大変な気苦労があるのではないかと推察します。
 でも記事を良く読んでいると、新車の売れ行きが好調とのこと、この不況の中で? と首を傾げざるを得ませんが、やはり売れるべく企画をしている努力が伺われます。あまりトヨタの車に詳しくありませんが、品質に関しては恐らく世界トップレベル、私も10年位前にクラウンに乗っていましたが、3年半乗って故障でディーラーに持っていったことは一度もなし、今の車のようにドライブしていて興奮は覚えませんが、長距離を走っても全然疲れないあの車にはさすが世界のトヨタと思ったことがありました。
 人員削減(6万5千人)をしていないと云うのもすごいと思います。恐らく自社の社員は可愛がりながら、下請けの会社にはかなり酷い仕打ちをしている? と思いきや、関連会社と連携を更に強めながら製品の質の向上に努めているとのこと。新聞に出ているのはパーツメーカーのデンソーと設計段階から協議を重ね、部品のコストダウンを図っているとのこと、もともとデンソーのパーツと云うのは信頼性が高く、私の車、イタリア製でもアメリカ製でも「デンソーのパーツを使っているから大丈夫。」と云う言葉を複数のディーラーから聞いています。関連会社がお互いに密接に関係しあいながらともに良い結果を出している、不況脱出のカギはここにあるような気がしました。経営努力をして無駄な経費を削り、人員を減らすことなく、良く売れる品質の良いものを作り出す、正に際物を使わずに基本にのっとって事業を進める。極く当たり前のことを我々は忘れ、責任転嫁をして喘いでいるだけではないか? この新聞記事を読んでそう自分に戒めました。
 終生雇用の習慣が身体に染みつき、未だに抜けきれない日本にとって、高校、或いは大学を卒業して自分の一生を捧げる覚悟で入社するにはものすごく決心が必要なことだと思います。そんな中でここ数年来話に聞くような10数社も就職試験を受けて、とってくれるところなら何処でも良いと右往左往するのは本当に不幸なことだと思います。だから入社後僅かな期間で転職を余儀なくされる人が多いことに少し納得せざるを得ません。トラバーユなどの転職雑誌が今や全盛ではありますが、このような情報誌をいち早く発刊した会社は先見の明があったと云うことになりましょうか? 日本では転職イコールNegativeなイメージになりやすいのですが、諸外国、特にアメリカではより自分に合った、より収入の良いところに移動すると云うPositveな、Aggressiveな捉え方をするようです。私自身も、自分の診療所から患者を紹介するには遠すぎると云う理由で、大学病院から日赤に移ったことを親友に電話で話したとき「もう~、お前は続かないんだから~。」と云われてしまいました。私には大学病院に残りたい気持ちがあったのですが、この時は父親の命によるもので、あまり父親の言いつけを守らない私にとっては、先の永くない父の止むに止まれぬ提言と捕らえ、それに従いました。もちろん今ではそのパイプを大いに利用させていただき、そして患者さんの役に立てると考えているのですが。
 私の廻りを見ても、不況の中で景気に関係なく仕事に追われ、それなりの収入を得ている人達が少なからずいます。不況のせいだと責任転嫁しても得るものは何もないはず、医療改革も一方的に突き進められ、これから私の世界も厳しくなることは覚悟の上ですが、先日医者仲間で話し合った中で、診療報酬が下がるのは止むを得ないが、患者負担を増大させて受診抑制がかかることだけは阻止しなければならないと云う結論に達しました。正にそうだと思います。そんな中で一人勝ちしようとまでは考えませんが、何とか自分が生き残っていく道を更に模索していかなければならないと改めて気を引き締める想いです。頑張らなくっちゃ!!