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カルロス・ゴーン

 日産自動車が驚異的な経営立て直しを実現しました。瀕死の状態だった日産はフランスから辣腕の経営者を招致し、予定よりも1年早くこの財政建て直しの荒業をこなし、その業績にマスコミを初め周囲の人達は喝采を送っています。しかしその陰でリストラに遭い、生活の糧を失った人が数多くいることを考えると、本当にその業績を手放しで称えて良いのか複雑な心境です。もともと私が好きだった”フェアレディ”を創り出すこの会社に、私個人的には興味を持って観ていました。高校時代の親友も日産に就職し、その後退職して今は会社経営をして立派な仕事こなしています。トヨタ、ホンダと並んで日本の優秀な自動車産業を牽引して行った会社です。フェアレディ432、フェアレディ240Z、スカイラインGTRと歴史に残るスポーツカーの名車も創ってきました。もともと狭い国土で都心部では鉄道網が整備され、車がないと生活出来ないアメリカとは全く異なる環境の中で、日本の自動車産業は独自の道を歩んできました。最盛期にはアメリカのBIG3の経営者も大統領と一緒に来日し、飛ぶ鳥を落とす勢いの日本の自動車メーカーへ、遠慮なく云わせてもらうなら”物乞い”までさせた産業でした。しかし、そのアメリカ自動車産業が自らの欠点(粗雑な創り、経済性の無視など)に気付き、品質改良を行い、優秀な日本車と同じレベルの車を作り始めるようになってから、そして狭い日本に車が溢れるようになってから、日本の自動車産業は斜陽を迎えました。日本は決してアメリカに”物乞い”をしに行くことはありませんでしたが。
 ここ数年トヨタやホンダが外国で良い業績を示すにも関わらず、日産だけがあまり振るわない成績を残していた理由はあまりよく分かりません。品質としてそれほど大きな差はないと考えていたのですが。そこで大鉈を振るう外国人を招き入れました。義理人情に硬い日本人には決して出来なかった荒業だったことと思います。
 正に今の日本の経済状況がこのカルロス・ゴーンの来日する前の日産と同じ状態。日産は日本と云う国に比較して小さかったから(犠牲になる人の絶対数が少なかったから)、そしてリーダーシップを取るのが外国人だったから、そして何よりも大事なのはこのリーダーが本当に会社を救うことだけを目的にして仕事を成功させたと評価されるまでに至ったのだと私は考えています。ところが今の日本のリーダー達は? 大勢の国民に犠牲を、痛みを強いること、そして自らの支持率を第一に考えて事を進めようとし、自らの口から出してしまったことを実現するため、何よりも優先してごり押してことを進めようとしていることが大きな違いだと考えています。利益追求の株式会社であるからこそ、或いはハードランディングが許されたのかも知れません。しかし、国民を乗せた飛行機はハードランディングは許されませんよ。竹中さんの方針は大手銀行のトップ達から総すかんを喰らい、訴訟の動きまで出てきているようです。そもそもそんな訴訟の国の弁護費用に血税が注ぎ込まれること自体納税者として納得行きません。竹中さん個人を訴えて、竹中さんが自分の収入の中から弁護費用を出して欲しいと思います。それくらい不良債権処理加速策は竹中色の強いものだと考えます。そしてその人を指名した最高責任者も重い責任を背負っていると考えます。
 今回の日産の立ち直りに関して、その犠牲とも云うべきリストラされた人や、下請けの会社のことには社会の目はあまり向けられません。それぞれに独自の活路を見いだして第二の人生、或いは社運を賭けた道へ進んでいることと思いますが、それはそれだけの体力を持ち合わせていたり、個々に指導できるような社会的な安全網があって初めて成り立つこと。それに対して国のやり方は体力と財力のない人には諦めてくれといわんばかりの政策、そこには雲泥の差があると考えています。今社会福祉が切り捨てられ、見放されかけている老人達は、かつての日本の高度成長時代を支えてきた人達、或いは命を懸けて日本の国土を守ろうとして辛うじて生き残った人達もいるでしょう。放漫な政策で日本を食い物にしてきた政治家達の末裔がそんな人達にとどめを刺すようなことが許されて良いはずがありません。日産の荒療治は多くの犠牲を伴う国の立て直しのサンプルにはなり得ないと私は考えています。