何もかもIT化?
コンピューター産業もどうやら斜陽の兆しを見せています。ネット長者なんて言葉も流行るくらい、日本の10年は失われても国内外ともに嵐のように過ぎていくITの波に乗った勝ち組の人達も多々いたようです。インフラが整い、ソフトの面でも充実し、いよいよ今後は衰退期? Windowsの寿命もあと数年なんて囁かれています。これからはLinuxの時代? そう、私も含めてIT化に投資し過ぎた人達が今度は如何にしてお金を使わずにインフラを整えるかを考えるようになってきたと思います。そうだよ、電子カルテが500万だなんてバカにするなよな!!
考えてみれば本当に多くのものがIT化されました。私が最近一番腰を抜かしたのは入学試験の合格発表。娘が受験したある中学校の合格発表は某日何時からWeb上で受験番号で公表するとのことでした。結果を見るのが怖い私に代わって長男がそのWebを探してくれましたが、IT化もここまで来たか? と驚愕の感すら抱いたものです。もちろん今まで通りの学校の掲示板でも発表がなされるのでしょうけれど、そのうち家庭がインターネットに繋がってないような処の子供はとらないなんてことになるのでしょうか? 末恐ろしい気持ちになります。
E-Mailは本当に便利、私の所属する複数の団体(例えば同窓会や医師の集団、車のクラブなど)でもE-Mailでのお知らせの配布を理想としているようです。早いし確実だし、しかもコストがあまりかからない、正に良いことだらけですが唯一の欠点はインターネットに繋がるインフラがないと手も足も出ないこと。特に医師の集団においては高齢の先生もいらっしゃることから必ずしもE-Mailの通信が可能とは限りません。”E-Mailのない人はFaxで”と云われますし、アンケートにアドレスを書き込むようにとの指示を出したのに、アドレス欄には住所が書いてあるとお嘆きの幹事さんもいらっしゃいました。使えれば便利ですが、手段と知識のない人にとってはE-Mailの接続のための手数と勉強しなければいけないことの量は大変なものになるはずです。
私も十数年前にIT化? に目覚めましたが(もしかしたら選択したOSは間違いだったかも知れない)、もしあの時行動を起こさず、今まで手書きの世界にいたらと思うとちょっとゾッとするような想いです。たまたまE-Mailのお知らせの配布が始まった時にアドレスを持っていたので、上手く波に乗り遅れないで済みましたが、それも偶然の賜物であることは否定し得ません。最近友人と食事に行く約束をしましたが、その時のMailのやりとりは ”毎度おなじみの○○○○○(レストランの店名) △月□日 20:00。”と云うMailに対して私が ” (`_´)ゞ Tak”と返信しただけで楽しい一時を持つことが出来たのですが、それは簡便で省力化が充分に出来ているものです。
携帯電話の普及も広い意味ではIT化でしょう。今や小中学生までもが携帯電話を持ち、いつでも捕まえることが出来る、或いはメッセージを送ることが出来る、これは確かに便利です。むしろ私の年代のように携帯電話がなかった青春時代を過ごした人間の生活を今の若者が観たら、不便極まりないと考えるのは当然です。例え電車に乗っていても話が出来る? これこそ今問題になっている訳ですが、以前Grumbleの”マナー”に書いたように、それがいろいろなトラブルの原因になることも多々あるようです。確かに電車の中で私語は禁止ではないのに携帯電話で話をしている奴を見ると妙に腹が立つ、植え込み型ペースメーカーに影響を与えるには携帯電話をペースメーカーから10~20cmくらい近づけないとならない、思えば携帯電話を電車の中で使うことはそれほど迷惑ではないはず。それなのに私自身腹を立てるのはマナーを守らないことを見るのに腹を立てると云った図式になっているようです。結局IT化は更なる新しい迷惑を作りだしたと云う結果にもなるのでしょうか?
もともと日本のIT化はアメリカに追随したもの、今まで日本は全てにおいてアメリカに20年遅れて追いかけていましたが、IT化に関してはほぼリアルタイムに追随できたと考えています。アメリカにおいてIT化の牽引役になったのはクリントン政権時代のゴア副大統領、”情報ハイウェイ”と云う魅力的な言葉をキーワードに頑張りましたが、選挙では奇しくも現大統領のブッシュに敗れました。むしろゴアさんが大統領になっていたら今のイラク問題などはどうなっていたのか、非常に興味のあるところです。よりIT化が拡大し、戦争どころではなかったのではないかとも考えているのですが。
まだまだこれからIT化は進んでいくようです。SOHOが流行り、人は家から出ずして仕事をして給料をもらう。学校にも行かずに決まった時刻にコンピューターのモニターの前に座って授業を受ける。現金を持ち歩かずに電子マネーで決済して、家にも現金を置かない。通信販売が更に増えて家にいながらオーダーを出して品物が配達されてくる。我が医療分野ではロボットが手術をするようになり、医療ミスは格段に減少する。人間が病気になればどんな処でもパーツを替えることが出来、Anti-Agingを筆頭に人間は死ななくなる。良いことづくめのようにも見えますが、実際にはどうなのでしょうか? 家から出ないサラリーマンは運動不足になり、学生達は同世代とコミュニケーションを取らなくなる。Mailで情報を得たり、感情を伝えたりすることは出来ても、面と向かって話をすることは不得意になる。自分を表現する力がドンドン削がれていく。物事の決定には情状や人間的な感情が入り込む余地がなくなり、機械的に決めて行かれるようになる。買い物は手にとって品物の善し悪しを確かめることはなくなる。そして電子マネーに関して詐欺みたいなことが頻発する。ロボットの手術ミスはやむを得ないものと解釈される。よくよく考えるとろくでもない世の中になりそうです。いつかそのうちに”IT化はやめようぜ”と云う人が出てくると思います。そして先進派と過去への回帰派に別れ、ああでもない、こうでもないと云い争う場面が頻発するようになるのではないでしょうか? 入試の発表がインターネットを通じてなされるようになれば、桜の木の下で涙を流しながら親子で抱き合ったり胴上げされたりする場面もなくなるのでしょうね。ああ、あまり長生きしない方が良いかも。私もそろそろ感じています。IT化、もういい加減アクセルを少し緩めても良いんじゃないでしょうか?